神殺しのクロノスタシス2
美術室には、何もなかったので。

次。

「羽久~…。怖いよ~…」

「うるさいな…」

神相手に啖呵切ってた癖に、お前は今更何に怯えてるんだ。

怖いものなんて何もないだろ。

置いていってやろうか。真夜中の校舎に。

でもまぁ、夜の校舎が不気味なのは同感だ。

昼間は、全く何とも思わないのに。

夜になると、全然違う景色に見える。

何なんだろうな、これ。

「さて、次は稽古場か…」

確か、勝手に魔導人形がどんちゃん騒ぎしてるんだって?

「どうしよう…。魔導人形に襲われたら…」

「戦えよ…。お前魔導師だろ…」

何で魔導人形に負けるんだ。

襲われたら、戦えば良いだけの話だ。

所詮、魔導人形は魔導人形だろ。

束になって襲ってきたとしても、落ち着いて倒せば良い。

『禁忌の黒魔導書』が襲ってくるんじゃないんだから。

「入るぞ」

「え、あ羽久心の準備が」

稽古場に入るのに、心の準備も糞もあるか。

ガラッ、と稽古場に通じる扉を開ける。

魔導人形が踊り狂ってたら、「お前ら倉庫に帰れ!」と一喝してやるつもりだったのだが。

稽古場は、空っぽであった。

しーん、として、物音一つ聞こえない。

「…何もいないじゃん」

一応、魔導人形を収めてある倉庫も確認する。

ちなみにこの間、シルナは稽古場の入り口で震えていた。

あいつはもう置き去りにしておけ。

魔導人形達は、全く微動だにしていない。

軽くコツンと触ってみるも、無反応。

…拍子抜け。

「何のオチもないじゃないかよ…つまんね」

やっぱり、七不思議なんて迷信でしかないのだろう。はい、次。

第二稽古場。

「あぅぅ…。帰りたい…もう帰りたい…」

「じゃあ帰れよ」

俺一人で行くからさ。

しかし。

「やだよ。今更一人でなんて帰れないよ~…」

「…」

見たか。この情けない姿。

これがイーニシュフェルト魔導学院の学院長っていうんだから、世も末だな。

とにかく、第二稽古場に向かおう。

そもそも稽古場は、夜になると施錠するから、中には誰もいないはずだが…。

「おーい。誰かいるのか」

俺は、第二稽古場の鍵を開け、中に入る。

門限過ぎてるのに、勝手に魔法使ってる馬鹿がいたら。

とりあえず、ぶっ飛ばしてやる。

こちとら、神だの禁書だのを相手にしてきたのだ。

今更幽霊ごときでびびるか。

人の学院の稽古場を、勝手に使うような輩がいたら、叩き出してやれば良いのだ。

「…いる?羽久、誰かいる?」

「…いや…」

生徒達の証言によると、第二稽古場で魔法の練習をする生徒の幽霊が出るそうだが。

それらしき人物(?)は見つからない。

何だ、何もいないじゃないか。

「無人だよ。馬鹿馬鹿しい」

イレースだったら、そら見たことか、と言うだろうな。

今のところ、七不思議のうちの一つも当たっていない。

やっぱり、生徒が勝手に考えた作り話が、広まっているだけなんじゃないのか。
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