神殺しのクロノスタシス2
次。六つ目。

確か、校舎の裏だったよな。

桜の木に、首吊り死体がぶら下がってるとかなんとか…。

これだけ聞くと、非常に気味が悪いが。

俺にとっては。

「あぁ~…♪こころざ~したか~く♪わ~ががくい~ん…♪」

掠れた声で校歌を歌いながら、校舎を徘徊する学院長の方が、よっぽど気味が悪い。

あのさ。

そんなに怖いなら、もうついてくんなよ。

むしろお前が七不思議だ。

「ここだな、桜の木…」

「…い、いる?羽久…」

ぶるぶる震えながら、シルナは俺の背中にぴったりくっついていた。

背後霊か。

懐中電灯で桜並木を照らしながら、辺りを見渡す。

…うん。

背中で真っ青な顔してるシルナ以外に、妙なものは見つからない。

これも出任せか?

「…って言うか、シルナ」

「な、にゃに…?」

「…」

「…?何で黙るの?」

「…そこ、死体が立ってる」

「!!!!?」

一本の桜の木を指差すと、シルナは飛び上がって奇声をあげた。

「嫌だごめんなさいごめんなさい許してくださいお願いします怖い怖い怖いあばえふ∈▲@〒⊆▽%」

「…」

試しにからかってみたら、予想以上の反応が返ってきた。

「…冗談だよ」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

学院長、地面に両手を着き、渾身の土下座。

馬鹿だなぁ…。

ちょっとからかってみただけなのに、ここまでびびるとは。

「冗談だって。何もいないよ」

「嫌だ死にたくない助けて羽久~っ!」

「…」

涙目でしがみついてくるシルナ。

…からかった、俺が悪かったよ。

「そもそも学院創設以来、首吊った生徒なんていないだろ」

「ふぇ…?」

俺の知る限り。

このイーニシュフェルト魔導学院で、自殺をした生徒はいない。

ましてや、校舎裏の桜の木で首を吊るなど、とんでもない。

シルナが学院長である限り、そんな生徒はいない。

自殺を考える前に、シルナが救ってしまうのだから。

「学院内で誰も死んでないのに、幽霊が出る訳ない」

「…言われてみれば…そうだね」

「…」

「…私、何に謝ってたの?」

…知るか。
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