神殺しのクロノスタシス2
「あぁ~…。さびしい~…」

「…」

「さびしいよ~…羽久~…」

ぐでーん、とデスクに突っ伏すシルナ・エインリー(学院長)。

今日はまた、何でこんなことになってるのかと言うと。

「誰もいない!校舎の中に誰もいない!学生寮にも誰もいない!私の!心の!中が!寂しいって泣いてるんだよ~っ!」

「…うぜぇ…」

今俺は、心の底からこの男をウザいと思っている。

イーニシュフェルトの聖賢者とか関係ない。

ただ単純にウザい。

「たった三週間の辛抱だろ」

「たった三週間!?三週間も!だよ。三週間も!」

そんなに強調しなくても、聞こえてるっつーの。

「三週間も生徒達に会えないなんて!顔を見られないなんて!声を聞けないなんて!」

「…」

「あぁ、私が見てない間に、生徒が危ない目に遭ってたらどうしよう?」

「…」

「やっぱり無理してでも、全校生徒分の分身を作って、一緒に帰省するべきだった!」

…世間では、それをストーカーと呼ぶ。

全校生徒分の分身って。一体何体生み出すつもりだ。

「あぁ~。何で夏休みなんてあるの?何で?」

お前は、今。

夏休みを楽しみにする、全国のチビッ子達を敵に回した。

そう、夏休み。

昨日から、イーニシュフェルト魔導学院では、夏休みに入っている。

従って、学生寮で生活していた生徒達は、それぞれ生まれ故郷に帰省した。

よって、現在イーニシュフェルト魔導学院にいる人物は、たったの三名。

俺と、シルナと、イレースの三人だけ。

これでも今年はマシだぞ?イレースがいてくれるから。

去年までは、このシケたおっさんと二人きりだったのだ。

な?考えるだけで地獄だろ?
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