神殺しのクロノスタシス2
「生徒達がいないと、ここはまるで別世界だよ…」

ぽつりと呟くシルナ。

…まぁ、その気持ちは、分からなくもない。

普段は、学院の何処にいても、生徒達の話し声や笑い声が聞こえてきた。

しかし。

今や校舎は空っぽで、静まり返り。

耳を澄ませても、物音一つ聞こえない。

つい一昨日まで聞こえていた、生徒達の喧騒は何処へやら。

イーニシュフェルト魔導学院は、もぬけの殻である。

ついでに、学院長もな。

「はー…。生徒がいないとなーんにもやる気出ない…」

「…」

夏休みになると、大体こんな感じだ。

お前な。

生徒達は、夏休みと言っても、それぞれ各教科で宿題頑張ってるんだぞ。

それなのに、学院長がこの体たらくとは。

生徒に示しがつかん。

でも、今はその生徒がいないから、怠け放題。

「暇だなー…。シュニィちゃんのとこ遊びに行こうかなー」

こんなこと言ってる始末。

「シュニィは今妊娠中だろ」

身重のシュニィのもとに、こんな暇をもて余した学院長が訪ねていくなんて。

迷惑以外の何物でもない。

「そっか…。じゃあ吐月君のところにでも」

何故、お前は誰かのところに遊びに行こうとするのか。

寂しがり屋か。

寂しがり屋だったな。そういえば。

「よし!吐月君と遊ぼう。ほら、羽久も一緒に」

何で俺まで。

ってか、吐月に迷惑だろう。いきなり来られたら。

全く、どうしてくれようか。

このままじゃ、夏休みが終わって生徒達が帰ってくるまで、この有り様だ。

まさか生徒達も、自分達が帰省している間に、学院長がこんな自堕落な生活してるとは思ってないだろうな。

生徒の方が、余程立派というものだ。

この学院長に比べたらな。

とりあえず、いきなり訪ねたら迷惑なので、ここはシルナをふん縛っておいて。

吐月に連絡を入れ、了解を得られたら、まぁ遊びに行かせてやっても良いだろう。

向こうは多分、迷惑だろうけど。

お前は暇でもな、聖魔騎士団は忙しいんだよ。

「大体、シルナ…」

と、言いかけた、そのとき。

「失礼しますよ、学院長」

我が校の女神が、降臨した。
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