神殺しのクロノスタシス2
遅い…ねぇ。

心外だ。

「僕の『学校』の授業が終わったのは、昨日ですから。これでもすぐに来たつもりなんですけど?」

「終わったのなら、すぐに来い」

無茶を言う。

「一応僕、学生なんで。学校が終わったからって、すぐには出られないんですよ」

周りのクラスメイトは、それぞれ家族のもとに帰る為に、荷造りをしているのに。

僕一人だけが、荷物の一つも持たずに学院を飛び出していったら、どう考えても怪しいだろう。

仕方なく、ルームメイトに倣って、荷造りする…振りをしてきた。

僕に、帰るべき故郷はない。

だが。

こうして、僕が戻ることを待ち望んでいた人物はいる。

例え、僕が彼女に利用されているだけなのだとしても。

別に構わない。

利用しているのは、お互い様だからな。

最初から、そういう契約だった。

「それで、『戦果』のほどは?」

「特に進展はありませんね。要するに…『いつも通り』ってところです」

僕がそう答えると、横で聞いていたパーシヴァルが、露骨に舌打ちした。

失敬な奴だ。

僕だって、それなりの危険を伴って潜入してるんだぞ?

いつ、あの学院長とその相方が、僕の正体に気づくことか。

地雷源の上を歩くようなものだ。

そんな危険な任務をこなしてる僕に、舌打ちをするとは。

「文句があるなら、あなたが行ったらどうです?僕以上にポンコツなあなたに、何が出来るのか、ポンコツな僕は大変興味があります」

笑顔で答えてやると、パーシヴァルは。

「…貴様…!」

どうやら、逆鱗に触れたようだ。

僕が憎いか。そうか。

好きなだけ憎んでくれ。

何なら、この場で殺し合いをしても構わない。

向こうも、そのつもりのようだし。

しかし。

「やめろ。お前達」

僕のスポンサー、ヴァルシーナが間に入った。

どうやら、仲間内のいさかいに苛立っているようだ。

「普段学院に潜入しているナジュが、長くここに滞在出来る期間は今だけだ。詳しい話を聞かせてもらう」

「…」

「夏期休暇と言っても、それほど長い訳ではない。争っている暇はない」

あぁ、はいそうですね。

あなたの言う通り。

「まずは、一学期の成果を全て報告してもらう」

「報告って…。定期的にあなたに話したこと以外に、新しい情報はありませんけど?」

「構わない。全員で情報を共有しておく必要があると判断しただけだ」

あ、そう。

じゃあ、スポンサー様の意向に従うとするか。

若干一名、パーシヴァルは不満そうだが。
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