神殺しのクロノスタシス2
全く。

こんな異空間で、そうそうたる魔導師達が、隠れてこそこそ会議とは。

いかにも、地下組織っぽいじゃないか。

小説や漫画なら、間違いなく、悪いことを企んでる組織だな。

実際、悪いことを企んでるし。

いや、それはお互い様か。

シルナ・エインリーの方が、余程悪いことを企んでるからな。

むしろ僕達は、主人公サイドなのだ。

悪を滅ぼし、世界をあるべき姿に戻す主人公。

な?素敵だろう?

「…アンブローシア」

『カタストロフィ』の幹部の一人、今度はパーシヴァルじゃなくて、サディアスという女が、口を開いて僕に問い掛けた。

「使える魔導師を見つけたと言っていたそうだが?あれはどうした」

あれ?

あぁ…。思い出した。

「そうなんですよ。優秀な魔導師がいるって聞いたから、折角あんな辺鄙な田舎に足を運んだのに…」

骨折り損、とはこのこと。

「精々、呪い師程度でしたね。魔力はかなりあるみたいですけど。治す方が専門で、戦う方はからっきし」

思い出す。あの村で出会った魔導師。

最後の最後まで、戦うのではなく、必死に村人を守ろうとしていた…。

あの、偽善者面した魔導師。

それに、軽く観察しただけで分かった。

あの男は、僕の望みを叶える糧にはならないと。

いくら魔力が多かろうが、あの甘ちゃんな性格じゃ駄目だ。

話にならない。

「使えるなら、勧誘しようと思ったんですけど…。役に立たなさそうだったので、やめました」

「殺したのか?」

「さぁ。多分死んでるんじゃないですか?」

致命傷を与えて、そのままその場を立ち去ったからな。

絶命したところを確認していないが、あの傷なら、多分死んでるだろう。

別に、どうでも良いけど。
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