神殺しのクロノスタシス2
二学期が始まってから、数日たったある日。

イレースが、学院長室に封筒を持ってやって来た。

「学院長。いつもの便りが来てますよ」

「え?いつものって…」

イレースに差し出された封筒を見て、シルナは得心したようで。

「あー…。そういえば、そんな時期だったね」

俺も、横から盗み見る。

いや、別に堂々と見ても構わないのだけど。

差出人は、『全国魔導学院教員委員会』と、何やら長ったらしい名前。

毎年この時期になると、この封筒が来る。

うちだけじゃなくて、ルーデュニア聖王国にある、全ての魔導学院に届けられているはずだ。

この委員会が何なのかと言うと。

要するに、色んな魔導学院の教師達が集まって、カリキュラムをどうするかとか、学院の運営状況やら。

何やら小難しい会議を行うのである。

ちなみにこれ、強制イベント。

行きたくなくても、魔導学院を創設したら、必ず一人以上の教員が、委員会に出席しなければならない。

去年までは、シルナ(の、分身)が行っていたが…。

「私、あれ好きじゃないんだよなぁ。なんか難しい話ばっかりされて…」

おい。

お前、ルーデュニア聖王国最難関の魔導学院の学院長だろ。

むしろ、自分が率先して委員会を引っ張っていく、くらいの気概を見せろ。

「うわっ、しかもこの日付…!某有名ケーキ屋さんが、数量限定の絶品プリンを販売する日じゃないか!」

よく覚えてるな、お前。

と思ったら、デスクの上の卓上カレンダーに書いてあった。

「◯月◯日、××堂プリン」って書いてある。

もっと大事なスケジュールはないのか。

「あの会議、長いから嫌なんだよなぁ。プリン食べてたい…」

我が儘過ぎる。

「ねぇ羽久ー…」

「…何だよ」

その、うるうるとした目は。

気持ち悪いからやめろよ。

「私の代わりに、行ってきてくれない?」

「却下」

「酷い!」

誰がお前のプリンの為に、わざわざあんな会議に参加するか。

俺だって面倒臭いんだよ。

「あぅ~…」

学院長ともあろう者が、なんとも情けない。

すると。

「…なら、私が行きましょうか」

思わぬ救世主が現れた。
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