神殺しのクロノスタシス2

sideナジュ

──────…なかなか、壮観な眺めだな。

クラスメイトの全員が、教室の後ろに立って、両手を上げている。

こんな眺め、人生で一度は見てみたかったんだよ。

まるで、ドラマみたいじゃないか?

当事者からしたら、笑い事じゃないんだろうけど。

だって、皆顔面蒼白。

その表情だけで、震えと怯えが、こちらに伝わってくる。

突如として豹変し、「教師」を一撃で殺した僕に、怯えているようだ。

いや…殺した、という表現はおかしいか。

だってこれは、元々命を宿さないお人形。

だから、心配しなくて良いのに。

こんなお人形、あの男なら、いくらでもまた量産出来るだろう。

「…そんなに怯えなくて、大丈夫ですよ」

あまりに彼らが怯えるので、僕は安心させる為にそう言った。

「あなた達は人質です。でも大丈夫。あなた達は殺されない」

断言出来る。シルナ・エインリーは生徒達を殺させるような真似は、絶対にしない。

羽久・グラスフィアの命が、脅かされない限りは…だけど。

「…」

僕は安心させる為に、わざわざ声をかけてあげたのに。

彼らは、ちっとも安心してくれていなかった。

むしろ、もっと怯えが増しているようだ。

何でなのかなぁ。

そう?そんなに怖い?

まぁ、それもそうか。

君達は、あの人形教師を、本物の人間だと思ってたんだからね。

君達にとって僕は、先生を殺した殺人者なのだ。

酷いな。

確かに僕は、人殺しではあるけれど。

少なくともこの「教師」に関しては、殺してはいないつもりだ。

ただ、消しただけのこと。

命を宿さない人形を一つ、壊してしまっただけ。

それなのに、僕を人殺し呼ばわりとは。

言い掛かりも甚だしい。

「…そろそろですかね」

僕は、ちらりと時計を見た。

自分の分身が消されたことで、異常事態を察知したはず。

さぁ、何て言うかな。何て思うだろう。

自分の可愛い「生徒」が、実は自分の敵だったことを知ったとき。

あの売国奴…ならぬ、売世界奴は、どんな顔をするだろう。

「…ほら、来た」

「…」

生徒達の危機を案じ。

どの面さげてやって来るのかと思っていたら。

こんな面さげて、やって来たよ。
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