神殺しのクロノスタシス2
「…ようこそ、シルナ・エインリー学院長」

「…」

…初めて見たよ。

こんなに間近に。

分身じゃない、本物のあなたのことを。

…あはは。

ヴァルシーナ、あなたにも見せてあげたいですよ。

きっと、とても滑稽だっただろうね。

「僕のこと、覚えてます?」

「…ナジュ君だね。ナジュ・アンブローシア」

「そうです。でも、それ略称なんです」

本名で入学するのは、スパイとしてどうかなと思って。

自分の名前、ちょっと短縮してみた。

「本名は、ルーチェス。ルーチェス・ナジュ・アンブローシアと言います。どうぞ宜しく」

「…ルーチェス君…」

「あぁ、紛らわしいんで、これまで通りナジュと呼んでください」

ルーチェスなんて呼ばれたら、別の誰かと間違われてる気分になるよ。

「…じゃあ、ナジュ君」

「はい」

この表情も、初めて見た。

シルナ・エインリーの、本気の…真剣な眼差し。

「…凄くないですか?」

僕、ようやくここまで辿り着けたよ。

あなたのもとに。

「イーニシュフェルトの聖賢者ともあろうあなたに、そんな真剣な目で見られるなんて。この国に、この世界に、そんな光栄を受けられる者が、何人いるんでしょうね」

「…そんなことは、どうでも良いよ」

「そうですか」

僕にとっては、大事なことだったんだけどな。

学院長は、興味がないらしい。

それより、可愛い生徒達の方が大事か。

そうだね。

そうじゃないとね。学院長なんだから。

何よりも大事で、かけがえのない可愛い生徒達…だって。

…笑わせてくれるね。
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