神殺しのクロノスタシス2
その言葉は、天音の理性を吹き飛ばすのに充分だった。

「許さない…!許さない、お前だけは…!」

「あ、何ですかまたやる気ですか?僕今、学院長と大事な話をしているところなので、後にして欲しいんですけど」

「馬鹿にするな!」

天音は、教室の中だということも忘れて、杖を振った。

光魔法だ。

俺は咄嗟に、教室の後ろで怯えている生徒達を守る為に、防御魔法を展開させた。

とにかく、何がなんでも、生徒に傷を負わせる訳にはいかない。

天音の渾身の光魔法は、この校舎を吹き飛ばさん凄まじさだった。

これには、『殺戮の堕天使』も驚いたようで。

「へぇ。あなた、やれば出来るんじゃないですか。やっぱりスカウトしておくべきでしたかね」

「誰が、お前なんかに…!」

「でも、あなたの存在はちょっと誤算でした。シルナ・エインリーと羽久・グラスフィアだけなら、どうとでも脅せるところだったんですが…。そこにあなたまで加わったら、ちょっと、形勢不利です」

残念そうな顔で、『殺戮の堕天使』は言った。

「仕方ない。今日のところは引き上げます」

「…逃がすと思ってるのか?」

俺は、天音に続いて杖を向けた。

このイーニシュフェルト魔導学院において、このように大それたことをしてくれたのだ。

相応の代償は払ってもらう。

しかし。

「逃げられますよ。簡単に」

何を根拠に、と思ったが。

次の瞬間、『殺戮の堕天使』は人質の生徒達に向けて、まるでハリケーンのような鋭い風の刃を繰り出した。

先程の天音の光魔法にも劣らず、凄まじい威力だった。

俺は生徒を守る為に、防御に徹するしかなかった。

そして。

「待て!」

「待ちません。さよなら」

『殺戮の堕天使』は、教室の窓を割って、外に飛び出した。

慌てて追いかけようとしたが、窓の外に、もう彼の姿はなかった。
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