神殺しのクロノスタシス2
「…」

虐殺された村人の話を聞いて、他の大隊長達は絶句していた。

「…シュニィ。大丈夫か?」

「はい…」

アトラスが、すかさずシュニィを気遣っていた。

確かに、妊婦に聞かせる話ではなかったな。

気分を悪くさせてしまったかもしれない。

俺だって、何度聞いても気分悪いのに。

「その『殺戮の堕天使』が…イーニシュフェルト魔導学院に潜入していたと?」

陰鬱とした空気を少しでも晴らそうと、無闇が尋ねた。

「そうだね。今年の四月から入学してきた生徒の一人だった…」

「堂々としたスパイだな」

と、ジュリス。

全くだ。

「しかも、それを学院長や羽久さんに気づかれずにいたなんて…」

「余程上手く隠してたんだろうな。前世忍者か?」

そう言いたくなる気持ちも分かる。

あのシルナの観察眼を欺くのだから、前世忍者でもないと無理だぞ。

「それに、あの射抜くような眼差し…」

「…シルナ?」

「あ、いや大丈夫…」

…?

何のことかと問い掛ける前に、キュレムが声をあげた。

「逃げられたもんはしょうがねぇ。とにかく、そいつを捕まえにゃならんのだろ」

「うわー…。面倒臭っ…」

ルイーシュ。本音を言うな、本音を。

「何か痕跡は残っていませんか?彼の行き先を辿れるかもしれません」

と、エリュティア。

確かに、探索魔法の使い手であるエリュティアなら、例え僅かな痕跡からでも、ナジュ・アンブローシアの居場所を突き止められるかもしれない。

何でも構わない。

髪の毛の一本でも、手がかりの一つになる。

「うん。エリュティア君には、この後一緒に学院に来て欲しい。学生寮に、ナジュ君の残した痕跡があるかもしれないから」

「分かりました」

エリュティアには申し訳ないが、『殺戮の堕天使』の居場所を探るには、彼の探索魔法が不可欠だ。

そして。

「皆には、『殺戮の堕天使』…ナジュ・アンブローシアと、彼が所属しているであろう組織を捜索して欲しい」

シルナは、きっぱりとそう言った。
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