神殺しのクロノスタシス2
そして、残っているのは二人。

俺と、シルナだ。

「私は、羽久と一緒に、『殺戮の堕天使』…ルーチェス・ナジュ・アンブローシアを探す」

「…」

シルナに言われて、初めて思い出した。

そういや、あいつ、そう名乗ってたな。

頭にルーチェスがついてようと、ついてなかろうと、あいつが『殺戮の堕天使』であることに変わりはないが。

「…本来、『禁忌の黒魔導書』の封印を解いた者に関する件は、私と羽久が受けた務めだった」

シルナは、静かに言った。

この場にいる、全員を見渡しながら。

「それなのに、私は私の管理するイーニシュフェルト魔導学院に、その犯人がいることも気づけず、こうして皆に手伝ってもらおうとしている…」

席から立ち上がり、シルナは皆に頭を下げた。

「私が不甲斐ないばかりに、皆に迷惑をかけて、本当に申し訳ない」

「そんな…。やめてください」

シュニィが、慌ててシルナを止めた。

「そうですよ。学院長の責任じゃありません」

「まぁ、あなたが気づけなかったってことは、多分この国の誰も気づけなかったってことなんで、そんなに気に病む必要、ないんじゃないですか?」

吐月と、ルイーシュが言った。

ルイーシュのこの軽い口調が、今ばかりは。

張り詰めていた空気を、良い具合にほぐした。

「…ルイーシュの言う通りだ、シルナ」

「羽久…」

一人で背負うなって、前にも言ったろ。

この場にいるのは、皆お前の味方なんだから。

「…ありがとう、皆」

シルナは、顔を綻ばせて言った。
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