神殺しのクロノスタシス2
…まずは、僕が『殺戮の堕天使』の行方を探さなくては。

その役目を果たすのは、探索魔法の得意な僕だ。

学院長が、直々に僕を指名してくれた。

僕の探索魔法を、信じてくれているからだ。

僕は、限られた痕跡を辿り、『殺戮の堕天使』を探さなければならない。

その為には、まず…。

「…緊張してるのか?」

「え?」

いきなり話しかけられて、内心驚いた。

振り向くと、そこに無闇さんがいた。

そう、僕は今回、この無闇さんとペアを組んでいるのだ。

自分の仕事に集中するあまり、無闇さんの存在を忘れかけていた。

申し訳ない。

「緊張してるようだな」

「あ、はい…」

「…」

「…」

…正直、無闇さんと何を話して良いのか分からない。

同じ魔導部隊の大隊長同士で、会議などで顔を会わせることは何度もあった。

が、無闇さんと二人きりでの任務は、これが初めてだ。

故に、どう接して良いのか。

無闇さんは僕より年上だし、しかも召喚魔導師という、特殊な戦闘スタイルを持つ魔導師だ。

僕も、探索魔法だけでなく、他の魔法も一通りは使えるけれど…。

共通の話題というものが…。

むしろ、喋らない方が良いのか?

無駄な会話を嫌うタイプか?

でも、今、先に話しかけてきたのは無闇さんだし…。

会話そのものが嫌い、という訳ではなさそうだ。

えっと…。緊張してるかどうか、だったな。

それは…。

「…はい。緊張…してます」

「そうか」

杖を持つ手に、力が入るくらいには緊張している。

だって、僕が探して、『殺戮の堕天使』を見つけないと。

捜索組は、何処を探して良いのか分からない。

全ては、僕に懸かっているのだ。

頼りにされているのは嬉しいけれど、でも、その分プレッシャーが…。

すると。

「…そんなに、気負う必要はない」

無闇さんは、僕に向かってそう言った。

「え…?」

「例え見つけられなくても、それはお前の責任じゃない。ただ、自分に出来ることを、出来る限りやれば良いだけだ」

「…」

これには、少し驚いた。

無闇さんって、寡黙なイメージが強かったから。

こんなに喋ってくるとは。

「僕、そんなに緊張してるように見えます?」

「あぁ…。少し引っ張ったら切れそうな糸みたいに見える」

そんなに?

いや、確かに緊張はしているけど。

でも、それだって仕方ないじゃないか。

「僕が見つけられなかったら…。皆困るし…」

「…そんなことはない」

無闇さんは、きっぱりと言った。
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