神殺しのクロノスタシス2
「俺達は仲間だ。同じ聖魔騎士団魔導部隊の大隊長だ。だから、一人で背負う必要はない」

「…無闇さん…」

…まさか、そんなことを言われるとは。

何だか肩の力が抜けるような…。

…一体どういう意味なのか。

言葉の通りに受け取って良いものか。

「…優しいねぇ、君は」

ふわり、と。

無闇さんの背中から、美しい女性が舞い降りてきた。

普通の人なら、度肝を抜かしただろう。

でも、無闇さんにとっては…そして、事情を知ってる僕にとっても…驚くべきことではなかった。

「えっと…。月読(つくよみ)さん…でしたね」

「そうだよ」

月読さんは僕に振り返り、笑顔で答えた。

何を隠そう。

無闇さんの持つ『死火』という魔導書の化身。

無闇さんと契約している、冥界の魔物。

この人が、無闇さんの相棒なのだ。

「君、探索魔法が得意なんだってね?」

「は、はい」

無闇さんと話すことも少ないのに、月読さんと話すなんて、初めてだ。

「凄いねぇ。私、見てみたい」

み、見てみたい?

探索魔法を?

「どうやって探すの?ねぇ。どうやって探すの?」

「え、えっと」

「月読、あまりプレッシャーを与えるな」

無闇さんに諌められ、月読さんは楽しげに笑った。

…実質俺達、二人一組じゃなくて、三人一組なんだよな。

「出来る限りのことをしてくれ。その上で、『敵』が攻撃してきたなら、俺達が何とかする」

と、無闇さん。

俺達とは、つまり無闇さんと月読さんのことだ。

「俺には、探索魔法は使えない。だから、お前のサポートをする。お前を守る。俺に出来ることなら、何でも言ってくれ」

「は、はい…」

何でも…何でも…か。

「じゃあ、あの…差し出がましいんですが」

「うん?」

「ついてきてもらえませんか?行かなきゃならないところがあって…」

「分かった。同行しよう」

何となく、近寄り難いと思っていた無闇さんとの、距離が。

少し、短くなったような気がした。
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