神殺しのクロノスタシス2
無闇さんと月読さんを連れて、やって来たのは。

「…ここなの?エリュティア君」

と、月読さんに聞かれた。

「はい」

そこは、僕にとっての母校。

馴染み懐かしの、イーニシュフェルト魔導学院である。

「何でここに来るの?学院長に用事でもあるの?」

「あ、いえそうではなくて…」

「じゃあ、どうして?」

…えぇと。

これは、探索魔法の特性と言うか。

つまり。

「僕の探索魔法は、基本的に、探す対象の『痕跡』を手がかりに、持ち主を探してるんです」

「ふむ…?」

「彼の痕跡が残っているのは、多分ここだけなので…」

「…」

あ、どうしよう。

月読さん、あんまりよく分かってない顔してる。

僕も、感覚でやってる感じなので、言葉で上手く説明出来ない…。

「あの、えっと…。済みません…」

「…とにかく、学院の中に手がかりがあるってことだな?」

と、無闇さん。

「ある…かもしれないってだけです。確かなことは…」

「それでも、やってみないよりはマシだな。分かった」

無闇さんは、校舎に向かって堂々と歩みを進めた。

え、ちょ。

「無闇さん?」

「学院内を自由に捜索させて欲しいと、学院長に頼んでくる」

「…!」

「学生寮の方にも、俺から話をつけてくる。存分に探してくれ」

…なんと、頼もしい。

「分かりました。お願いします」

こうして。

僕は、久々に母校に足を踏み入れることになった。
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