神殺しのクロノスタシス2
その次に、僕はイレースさんに無理を言って、学生寮の中に入れてもらった。

ここも懐かしくて、つい感傷に浸ってしまいそうになるが。

今は、それどころじゃないな。

「ナジュ・アンブローシアが使っていた部屋は…?」

「こちらです」

イレースさんが、その部屋まで案内してくれた。

僕が使っていた部屋とは、また別だな。

「入っても?」

「良いですよ、どうぞ」

「でも、ルームメイトが…」

いるんじゃないのか?

イーニシュフェルト魔導学院の学生寮は、二人で一部屋だったはずだが。

「その生徒は、今実家に返しています。酷く…落ち込んでいるようだったので」

「…」

イレースさんも、さすがに言いにくそうだった。

…無理もないよな。

ルームメイトに杖を向けられて…人質にされたんだから。

お陰で、この部屋は無人…。

勝手に入らせてもらいます。ごめんなさい。

心の中で謝罪して、僕はその部屋に足を踏み入れた。
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