神殺しのクロノスタシス2
自分で言うのは憚られるが。

この形態になった俺に、そう簡単に敵う者はいない。

最初からいきなり全力出させられるとは。

ベルフェゴールは、俺に何を言おうとしていたのか。

色々気になるが、今は目の前の敵を退けることだけを考える。

クュルナさんもまた、臨戦態勢に入っていた。

予定通り、俺が前で、クュルナさんは後衛で補助魔法を…。

俺は全力で魔力を溜め、それを『殺戮の堕天使』にぶつけようとした。

しかし。

「あぁ、そうなんですか」

「!?」

『殺戮の堕天使』は、俺の相手をすると見せかけて。

俺の横をあっさりと通り過ぎた。

まさか。

『殺戮の堕天使』の狙いは。

「クュルナさん!!」

「こっちのうるさいハエから、退治するとしましょう」

俺は、思わず血の気が引いた。

何で、まずクュルナさんから。

「クュルナさん!」

「だ…大丈夫、です…」

聖魔騎士団魔導部隊、大隊長の実力は、伊達ではなかった。

クュルナさんは、咄嗟の攻撃にも、ギリギリのところで防御魔法を展開させていた。

しかし、完全に受けきれた訳ではない。

「あれ?一撃で倒そうと思ったんですが…。意外に堅いですね、あなた」

「言われるまでも…!」

クュルナさんは、炎魔法で牽制した。

この旗色は、良くない。

クュルナさんはあくまで後衛。戦うのは俺でなくては。

「俺を…先に倒してからにしろ!」

無理矢理、クュルナさんとナジュ・アンブローシアの間に割り込んだ。

しかし。

「勇ましいですね。でも、あなたの思い通りにはさせません」

「…!?」

ナジュ・アンブローシアは、あくまで目標を変えなかった。

どうして、そうもクュルナさんを先に…!

「クュルナさん!」

「っ…大丈夫です!」

怒濤のように繰り出される攻撃を、クュルナさんは防戦一方で守っていた。

大丈夫じゃないことなんて、見れば分かる。

弱そうな方から、先に倒そうとでも言うのか。

「許さない…!」

倒す。絶対倒してみせる。

だが。

「吐月、逃げろ」

「…!?」

ベルフェゴールが、俺に信じられないことを言った。
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