神殺しのクロノスタシス2

side羽久

──────…戦闘の気配を関知して、シルナと二人で、急いで駆けつけたところ。

間一髪のところで、二人を守ることに成功した。

俺が一瞬時を止め、その隙にシルナが、ナジュの攻撃を相殺したのだ。

少しでもこの連携が遅れていたら、二人共、危ういところだった。

しかも、見てみろ。

吐月の奴、あれ、最大形態じゃないかよ。

「は、羽久さん…!」

クュルナが、肩で息をしながら杖を握り締めていた。

衣服のあちこちが破れ、受けきれなかった傷のせいで、血が滲んでいた。

俺は苛立ちを感じた。

クュルナに、こんな無理をさせて…!

吐月にしてもそうだ。

魔力の消耗が激しいのだろう。酷く疲労しているのが分かった。

この野郎。うちの大隊長二人を…!

「…」

俺以上に、腹を立てている人物がいた。

何を隠そう、シルナ・エインリーその人である。

シルナにとっては、可愛い教え子達が傷つく姿は、何より見たくないもの。

そして今目の前に、教え子を傷つけた敵がいるのだ。

シルナの眼差しに、凄まじい怒りが宿っているのが分かった。

…こんなシルナ、滅多に見られるものじゃないぞ。

「が、学院長先生…」

「吐月君。クュルナちゃん。もう大丈夫だからね」

「済みません。俺、俺達…」

「良いから、下がってて。ここは私達に任せて」

吐月もクュルナも、不甲斐ない戦いをしたのではないことくらい、俺でも分かる。

それなのにこの二人が、これほど苦戦しているのは。

勿論、連携の取りづらい編成であったこともあるけれど。

ナジュ・アンブローシアが、それだけ強いってことだ。

…ならば、ここからは俺達の出番だ。

「羽久さん…私も…私もサポートを…」

クュルナが、苦しそうにそう言った。

気持ちは有り難いが。

でも、今は。

「大丈夫。下がってろ。吐月と一緒に」

「…でも…」

「ちょっと回復してこいってことだよ。そしたら手伝ってくれ」

「…!分かりました」

まぁ、その前に俺とシルナが片付けるがな。

この二人(と、一匹)を傷つけてくれたお礼は、しっかりさせてもらう。
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