神殺しのクロノスタシス2
…殺す…だって?

「あなたは神殺しの魔法が使える…。それなら、イーニシュフェルト魔導学院の学院長なら…僕を殺してくれる。僕を殺せる。そうでしょう?」

「…君は…何を言って…」

「…地獄なんです。生きてることが」

ナジュ・アンブローシアは、組み臥せられながら、抵抗することもなく。

ただ、涙を溢しながら続けた。

「あなたと僕は同じなんです。僕もあなたと同じ。ただ、愛する者の為に生き、そして死にたいだけ。僕を殺してください」

「…ナジュ君…」

「自分では死ねないんです。他の誰も、僕を殺せない。でもあなたなら、神を殺せるあなたなら、きっと僕を殺してくれる。だから僕は、あなたの敵になった…」

自分を殺して欲しい。

それが、ナジュ・アンブローシアの望み…目的だったと言うのか?

天音の村を襲ったのも?

『禁忌の黒魔導書』の封印を解いたのも?

イーニシュフェルト魔導学院に潜入したのも?

何もかも、自分がシルナの敵になり、殺してもらう為にしたことだと言うのか?

「…君は、一体何者なんだ?」

「…分からないんです、僕にも」

「君の中に、何がいる?」

「…」

ナジュの中に…何かがいる?

それって、まさか、もしかして。

俺やベリクリーデのような…。

「…少し、僕の話を聞いてくれますか」

『殺戮の堕天使』ルーチェス・ナジュ・アンブローシアは、ゆっくりと語り始めた。
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