神殺しのクロノスタシス2

sideナジュ

──────…思い出す。記憶の果て。

幸せだった頃の記憶。

永遠に続いて欲しかった記憶。

今はもう、儚い夢のように消えてしまった記憶。




えぇ、僕は幸せだったんです。

贅沢なくらい幸せでした。

実は僕、吐月さんみたいな、召喚魔導師なんですよ。知ってました?

元々はそうだったんです。

読心魔法は、僕自身が持っていた能力みたいなもので、魔物から授かったものじゃないんです。

こんな陰湿な魔法を自分で作り出すなんて、気持ち悪いと思いました?

大丈夫、僕も気持ち悪いですから。

それより、幸せな頃の話をしても良いですか。

あの頃僕は、ルーデュニア聖王国じゃない、ずっと遠く離れた時空にいたんです。

その時空でも、魔法の概念があって。

おまけにその魔法を使って、人間達が戦争をするような場所でした。

僕はただ、穏やかに暮らしたかったんです。

僕と僕の召喚魔は、二人だけで、ただ幸せに、穏やかに暮らしたかっただけなんです。

シルナ学院長、あなたなら、分かりますよね。

この人と一緒にいられるなら、その為なら何でもする。何でも出来る。

そう思える相手がいることが、どれほど幸せか。

僕は幸せだったんです。彼女が僕の傍にいてくれれば、それだけで良かったんです。

思えば、「それだけ」なんて言ってますけど、凄く贅沢なことだったんですね。
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