神殺しのクロノスタシス2
さっき言いましたよね、僕。

僕の生まれた時空では、魔法で戦争が起きてたって。

正に、大魔法戦争ですよ。笑えますね。

世の中が真っ二つに割れて、お互いに攻撃し合っていました。

世界は、僕達を放っておいてはくれませんでした。

僕達は、望まずに戦争に駆り出されることになりました。

そりゃそうなりますよね。

不死身の召喚魔を従えている、召喚魔導師。

どちらの陣営も、僕達を巡って争いました。

仕方なくどちらかの陣営についたら、そりゃあもう重宝されましたよ。

今では僕も、『殺戮の堕天使』なんて呼ばれてますけど。

僕、本当は人を殺すのが好きな訳じゃないんですよ。

信じてもらえます?

どの口が言ってんだ、って思います?

でも、僕は嫌でした。

僕が人を殺すことより、リリスに人を殺すよう指示するのが嫌でした。

リリスも嫌だったに違いないでしょう。

だけど、世の中がそんなだから、巻き込まれざるを得なかったんです。

そして、終わりの日がやって来ました。

死んじゃったんです。

リリスが、じゃないですよ。

彼女は不死身ですからね。死にはしません。

僕が、死んじゃったんです。

死んだと言うか…死にかけたんです。

敵の流れ弾を受けて、致命傷でした。

普段ならあんな豆鉄砲、当たるはずがないんですが。

もう何年も、何日も、毎日毎日戦ってばかりで。

頭の上を弾丸が通り過ぎていく、なんて当たり前の日常になってましたから。

まぁ、要するに、油断してたんでしょうね。

あるいは、もう死にたかったのかもしれません。

だけど、彼女は許してくれませんでした。

リリスは泣きながら、僕を抱き締めました。

あなたがいなくなったら、私はまた一人になってしまう。

私を一人にしないで。

そう。僕もそのつもりでした。

だって約束しましたから。ずっと一緒にいるって。

だけど、彼女は不老不死。

対する僕は、不老であっても不死ではない。

リリスを残して、僕一人だけ死ぬなんて嫌でした。

リリスもまた、自分だけ残されて、僕に会えなくなるのが嫌でした。

すると、何が起きたと思います?

リリスは僕と共に横たわり、そっと血の流れる僕の顔に手を当てて。

「置いていかないで」って言いました。

彼女の目から、一筋の涙が溢れました。

そして、それが僕が最期に見た、彼女の顔だったんです。
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