神殺しのクロノスタシス2
そして、出来上がったのが僕です。

何が起きたのか、もう説明するまでもありませんね。

心を読まなくても分かります。

でも一応、最後まで聞いてもらえますか。お情けで良いので。

僕は、リリスと一つになったんです。

リリスは僕と融合することで、僕の死を止めたんです。

皮肉なものだと思いませんか?

これで僕達、お互い望んだようになったんです。

僕の中にリリスがいる。

そのお陰で、リリスも僕も不老不死。

これで、ずっと一緒にいられます。

良かったじゃないか。おめでとう、神様ありがとう。

…ただし、リリスの姿はもう見られませんけどね。

リリスの、あの太陽みたいな笑顔は、もう見られない。

リリスの、あの涼やかな声も聞こえません。

リリスの、あの温かい手を繋ぐことも出来ません。

抱き締め合うことも、互いに話をすることも、笑い合うことも。

何もかも、出来なくなってしまったんです。

どうですか、シルナ・エインリー学院長。

他ならぬ自分の中に、自分の愛する人がいるのに。

手を伸ばしても、心の中で語りかけても、答えてはくれないんです。

ただ自分の中に、彼女の気配を感じるだけで。

こんなに残酷なことってあります?

僕は一人ぼっちになったんです。

神様ありがとうなんて、どうやって言えば良いんですか?

神様こそ、死んでしまえば良いんですよ。

僕達は確かに、ずっと一緒にいたいと願いました。

でも、それはこんな形で。

こんな、残酷な形で、一緒にいたかった訳じゃない。

だって、僕の隣、誰もいないじゃないですか。

声を出しても、答えてくれないじゃないですか。

誰の温もりも、感じないじゃないですか。

こんな形で、一緒にいたかったんじゃない。

でも、僕は誰を恨めば良いんです?

「置いていかないで」って泣くリリスを置き去りにして、僕だけ死ねば良かったんですか?

リリスだって、きっと、こんな形で一緒にいたかった訳じゃないんでしょう。

でも、そうするしかなかったんです。

二人で一つになって…僕達は、一人になってしまった。

おまけに、死ぬことも出来なくなってしまった。

ねぇ、シルナ・エインリー学院長。

考えてみてくれませんか?

僕がこうしてあなたに会うまで、どれだけ悲しくて、苦しくて、辛くて、寂しかったか。

ずっと、一緒にいられるのに。

今も僕の中に、彼女は生きてるのに。

それなのに、僕、一人ぼっちなんです。

気が狂いそうになると思いませんか?

実際、僕は狂ってしまいました。

あまりに寂しくて、生きるのが辛くて、僕は壊れました。

だから今、僕はここにいるんです。
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