神殺しのクロノスタシス2
気が狂った僕が、何を考えたか。

そう、逃げようと思いました。

腰抜けだと笑いますか?

でも、僕、もう本当に壊れてたので。

一緒に相談してくれる人もいなかったので。

死ぬこと以外に、逃げ道を見つけられなかったんです。

不死身の僕を、どうやって殺せば良いのか。

そんなのこっちが知りたいですよね。

そこで僕は、ありとあらゆる方法を考えました。

どうやったら死ねるのか。誰だったら、僕を殺せるのか。

こんな死にたがりの前に現れたのが、『カタストロフィ』でした。

『カタストロフィ』が何か、ですか?

良いですよ。答えてあげます。

僕は別に、彼らの仲間じゃありませんからね。

ただお互いに、利用し合っていただけで。

『カタストロフィ』は、あなたの大好きな二十音さんの中にいる、邪神を殺そうとしている魔導師一味です。

僕は、そこに勧誘されたんです。

僕個人としては、聖なる神なんて、邪神なんて、どうでも良かったんですけど。

でも、『カタストロフィ』のリーダー、ヴァルシーナが言いました。

「神の力を以てすれば、不死身のお前を殺せるだろう」って。

藁にもすがる思い、って奴ですよ。

首を吊ろうが心臓を抉り出そうが、死ねない身体ですからね。

もし『カタストロフィ』に荷担して、神様とやらが復活して、大戦争してくれれば。

僕は、その渦中に巻き込まれて、死ぬことが出来る。

そして、あなたのことも知りました。

神殺しの魔法、ってのを使えるそうですね。

神を殺せるなら、『冥界の女王』も殺せるんじゃないかと。

そう思ったから、僕は『カタストロフィ』に荷担しました。

えぇ、『禁忌の黒魔導書』の封印を解いたのも、その為です。

天音さんの村を襲ったのも。

イーニシュフェルト魔導学院に潜入したのも。

何もかも、あなたの敵になる為でした。

あなたの敵になれば、あなたはきっと、僕を殺してくれる。

死ねば、あの世に行けば、僕達はようやく再会出来る。

今度こそずっと一緒だね、って笑い合える。

髪を撫でてくれる。ナジュ君、って呼んでくれる。手を繋いでくれる。

彼女を抱き締めてあげられる。

そう願うのって、おかしいですか?

その為に流された命と、僕達がこれまでに流してきた涙と、どちらが重いですか?

僕には、もう分からないんです。

死んで楽になりたいんです。

ねぇ、学院長。

僕、もう辛くて、耐えられないんです。

限界なんです。

解放してもらえませんか。

この地獄から、助けてはくれませんか。

死んだら、僕が殺した人皆に、たくさんたくさん謝りますから。

だから、許してくれませんか。

誰でも良い。何でも良いから。







「…リリスに、会いに行かせてください」





< 300 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop