神殺しのクロノスタシス2
一体どんな奇跡が起きて、僕達がここにいるのか。

もう、そんなことはどうでも良いけれど。

「…ここ何処?とか、聞かないの?」

と、リリス。

「…どうでも良かったんで…」

あなたがそこにいるのなら、ここが何処だろうと、地獄の底でも何でも良い。

「じゃあ教えてあげよう。ここは、君の心の中」

「心の…中?」

「頭の中、でも良いかな?とにかくここは、君の中にある精神世界なんだよ」

はぁ…精神世界…。

…何処?

「本来は、君はここには来られない。でも…あの外にいた学院長先生のお陰かな。一時的に、君を自分の精神世界の入り口を開けてくれたんだ」

「…学院長が…」

…つまり、僕は死んでないってこと?

相変わらず、不死身のまま?

「現実世界の僕は、生きてるんですか」

「そうだよ」

「…なんだ…」

死んだ訳じゃないんだ。

「なんだって、君ねぇ…。この死にたがりめ」

「僕は死にたがりなんで…」

「…でも、君を死にたがりにさせたのは、私だね」

「…」

「…ごめんね」

リリスは、再び僕を抱き締めた。

温かかった。

「全部私が悪い。私が背負わなきゃならないものを、全部君に押し付けちゃった」

「…」

「それでも私、どうしても君と一緒にいたかった。…一人に、なりたくなかったの」

「…はい」

「だから、あんな勝手なことしちゃった。君に、辛いだけの何百年を押し付けちゃった」

「…」

「君は、私を恨んでるだろうね」

…恨む?

「…恨んでませんよ」

「そうなの?」

「恨んでた…こともあるのかもしれないけど、なんか…あなたの顔を見たら…どうでも良くなって…」

「も~…。君って本当、そういうところ変わらないんだから」

ごめんなさい。

昔から、難しいことは考えない主義で。

と言うか。

「…見てたんですか?あなたと融合してからの数百年の間」

「…うん、見てたよ」

そうか。見てたか。

見られてしまったか。

「僕があなたに会う為に、たくさんの罪を重ねるところ…見られてたんですね」

「うん。君が私に会う為に、たくさんの罪を重ねるところを…ずっと、見てたよ」

そりゃそうだよな。

ずっと一緒にいたんだから。

「もし声が届くのなら、君を止めたかった」

「…済みません。僕…あなたの望まない僕になっちゃったのかもしれません」

自分が殺してしまった人間が、何人いるのか。

最早、数えることも出来ないくらい殺してしまった。傷つけてしまった。

それなのに。

「君は何も悪くない。全ては私の我が儘。君を人として死なせず、私と融合して、君を化け物にしてしまった、私の罪」

「…」

「私は、私が置いていかれなくないばかりに、君を縛り付けてしまった。ごめん、ごめんねナジュ君。ごめんね…」

…そうか。

考えてみれば、そうだったな。

リリスが僕と融合しなかったら、僕はあのまま死んでいたのだ。

人間として。

「…良かった」

「…?何が?」

今、僕は心から安堵した。
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