神殺しのクロノスタシス2
「私達にとっての贖罪は、生きること。その面さげて無様に生きて、生きて、生き続けて。そしていつか許しが来たら、そのときに私達はようやく、あの世でまた会える」

「…」

「…そうじゃない?」

「…本当に…あなたって人は…」

…ズルい。

卑怯だよ。そんなこと言うのは。

だって。

「…格好良いこと言ってるつもりで、それ全部、建前でしょ?」

「あれ。バレた?」

「バレますよ…」

どれだけ長く、一緒にいたと思ってる。

彼女の本音は、ただ一つ。

最早、心を読む必要もない。

大好きな人に、生きてて欲しい。それだけ。

「…あはは…」

そうだね。本当に簡単なこと。

立場が逆だったら、きっと僕も、同じことを言っただろうね。

例えどれほどの罪を重ねようと。

ただ生きて欲しい。好きだから。その人が大好きだから。

なんて利己的。最高の自己満足。

だけど、これが嘘偽りのない本音。

好きな女の子が頼んでるんだ。

これが他の人間なら、容赦なく蹴っ飛ばしてやるけど。

でも、他の誰でもない、あなたの願いなら。

「…分かりました。生き恥晒して、無様に生きてみます」

「…うん。ありがとう」

散々罵倒もされよう。

どの面さげて生きてんだって、怒鳴られもしよう。

集団リンチに遭っても仕方ない。

でも、他でもないあなたが、僕にそれを望むなら。

「…僕、生きますから。あなたも、そこで…一緒に、僕と一緒にいてください」

「うん。…ずっと一緒にいるよ」

約束したもんね。

これまで歩んできた道は、まるで茨のように辛い道。

そしてこの先に待つ道にも、きっと茨が生い茂っている。

歩く度に血を長し、苦しみ、傷つきもするだろう。

孤独に泣き、苦しみに喘ぎ。

もう死にたい、解放されたいと願いながら。

それでもいつか、不老不死のはずの僕達を殺してくれる人が現れたとき。

それが神でもシルナ・エインリーでも、誰でも良いけど。

そのときようやく、僕達は許されるのだろう。

生きてて良かったと、言える日が来るのだろう。

だから、それまでは。

「…ここで見ててください。僕の…僕達の、生き様を」

「うん。ずっと見てるよ」

「あと、最後にもう一つ」

「?」

僕はリリスを抱き寄せ、その唇に口付けした。

「…あなたに会えて、良かった」

「…ナジュ君…」

「あなたと共に生きることが出来て…僕は、幸せです」

「…ありがとう」

あなたに会わなければ、僕は人として、こんな罪を背負うこともなく死んでいただろう。

多分、それが正しい在り方だったのだろう。

それなのに僕は、その道から逸れた。

自分から敢えて、違う道を選んだ。

そしてその先に、あなたがいた。
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