神殺しのクロノスタシス2
──────目を覚ますと。

なんか妙に、身体が重いなぁと思ったら。

目の前に、シルナ・エインリー学院長がいた。

あぁ、そういえば僕…この人達と戦ってたんだっけ?

で、負けが確定したと…。

そうか。

そうだったな。

「…夢、見てたんですかね。僕は」

「…会えたんだね?リリスちゃんと」

「あれは、あなたが都合良く僕に見せた幻ですか?」

「さぁ。私の心に聞いてごらん」

…成程。

幻でもなければ、夢でもなかったらしい。

ってか。

そんな都合良い魔法がこの世にあったなら、それを覚えれば良かった。

まさか、精神世界の中に入れるなんて。

つまり僕、心の中で、心の中にいるリリスに会ってたんだな。

なんて馬鹿馬鹿しい。

あんな回りくどいことせずに、最初から学院長のところに行って。

「これこれこういう事情なんですけど、なんか良い方法ありません?」って、聞きに来れば良かった。

何をやってたんだ、僕は。

こんな簡単に、解決することだったのか…。

「…はぁ…。アホらし…」

もう、戦意とか完全に消えてなくなった。

杖取られたから、抵抗しても無駄なのだが。

とはいえ。

「断罪するならしてください。あなたに殺されるのなら、何の悔いもありません」

「…それが、君とリリスちゃんの望み?」

「えぇ。いつか僕達を殺してくれる人が現れたら、それが僕達の許しだそうです」

上手く行けば、早速許しが得られるかもしれない。

しかし。

「…ごめんね。世界は、まだ君達を許してはいない」

シルナ・エインリーは僕の上から退いて、立ち上がった。

…あれ。

「まだ、許してくれませんか」

「残念ながら」

そして、僕の杖を、僕の手に握らせた。

「…むしろ、これからが、君達の新しい人生の始まりだよ」

「…」

…マジかよ。

「…はは…」

笑いしか出てこない。

そうか。そうですか今から始まりですか。

贖罪の旅は、まだ長そうだ。
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