神殺しのクロノスタシス2
「君の力が必要なんだよ。ナジュ君」

「…」

「一緒にイーニシュフェルトに来て、優秀な魔導師の卵達を…君の同級生だった子を、育てていこう」

「…あなたは」

ナジュは、差し出されたシルナの手を、すぐには取らなかった。

「そうやって、自分の便利な手駒を増やすんですね」

「…バレた?」

「僕の前に、嘘や建前は無意味ですよ」

だろうな。

「…でも」

ナジュは、差し伸べられたシルナの手を取った。

「全ては、僕が死ぬまでのこと。またいつか、リリスに会えるまで」

「私のところに来たら、また精神世界の魔法をかけてあげるよ」

「それも脅しですか」

脅しと言うか、単なる意地悪だな。

「冗談。いつでも会えるように、教えてあげるから」

「まぁ、結局あなたに絆されて、手駒の一つにされるのは癪ですけど…」

そう言いながら、ナジュはゆっくりと立ち上がった。

「リリスと再び会わせてくれた分と、退屈な監獄生活から解放してくれた分の恩返しくらいは、してあげても良いですよ」

「…決まりだね」

「はい」

こうして。

『殺戮の堕天使』と呼ばれた、ルーチェス・ナジュ・アンブローシアは、長年の苦しみから解放され。

更にイーニシュフェルト魔導学院は、新たな教員を得ることになったのである。
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