神殺しのクロノスタシス2

side羽久

──────…ちなみに、その後。

「何をやってるんですか、あなたは…」

「…手当て」

天音は、たった今自分がタコ殴りにした相手に、回復魔法をかけていた。

目の前に怪我人がいたら、見過ごせないらしい。

例え、自分が負わせた傷であっても。

殴った相手の手当てを自分がするって、なんか変な感じだな。

「別に治さなくて良いですよ」

「…治す」

「どうして?」

「…あなた、イーニシュフェルトの教師なんでしょ。教師が…顔ボコボコになってたら…生徒が怯える」

「成程。確かに」

先生の顔の方が気になり過ぎて、全然授業に集中出来ないだろうな。

でも、天音。

それは建前、だろう?

「…はい。終わり」

「凄いですね、完璧に治りました…。回復魔法恐るべし」

天音の回復魔法の腕前は、シルナにも負けず劣らずだからな。

「今度から、怪我をしたら、あなたのところに行くことにします」

「…来なくて良いよ」

「駄目ですか?」

「そんな…治さないといけないような傷…わざわざ作らなくて良い」

そう言って、天音は杖をしまった。

それだけで分かる。

「…分かりました。じゃあ、もう二度と会うことがないよう祈りましょう」

「こっちこそ」

この二人が、二人なりに、お互いの因縁にけじめをつけたのだと。






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