神殺しのクロノスタシス2
その日、シルナは全校集会を終えて、学院長室に戻ろうとしていた。

そこで、不意に生徒達の話し声が聞こえてきた。

「ねぇ、ねぇ。見た?」

「うん、見た見た!」

女子生徒二人が、はしゃいだ様子で話していた。

「めっちゃ格好良かったでしょ?」

「うん!凄いイケメンだった!」

イケメン…?と考え込むシルナ。

勿論、女子生徒達は、自分達の会話がシルナに聞こえているとは思っていない。

「でもあの先生、風魔法の授業担当らしいよ」

「えぇー!風魔法かぁ。苦手なんだけどなー」

そこで、シルナは気づいた。

風魔法の担当と言ったら、この度新しく赴任してきた、ナジュ君のことだ、と。

「でもあの先生の授業受けたい!」

「私も!間近で見たい!」

きゃっきゃしながら、女子生徒達は教室に帰っていった。




で、また別の日。

「ナジュ先生って、本当格好良いよね!」

昼休み、廊下を歩いていたシルナは。

教室の中から聞こえてきた、その言葉に足を止めた。

「だよね~!私、好みドンピシャなんだけど」

「ちょっと童顔なところも素敵だよね」

「教え方も分かりやすいもんね」

シルナ、その場で硬直。

「実技の授業も、ナジュ先生がやってくれるんだって」

「本当に?」

「嬉しいけど、でもあんなに格好良いんだもん。緊張して上手く出来ないよ~」

シルナ、わなわなと震え出す。

「ナジュ先生って、本当格好良いよね!」

廊下で震える学院長の存在も知らず。

女の子達は、新しくやって来たナジュ・アンブローシアのことを褒めちぎっていた。





またしても別の日。

廊下を歩いていると、ふと生徒達の声が聞こえてきた。

「あ~!今日も格好良かった~!」

「ね!本当、至福の時間だった~!」

あの子達、先程まで風魔法の授業を受けていた生徒だ、と気づくシルナ。

慌てて階段の後ろに隠れる。

「ナジュ先生、本当格好良いなぁ~」

「そう…?でも、私はやっぱり、グラスフィア先生派だなぁ」

「え~?私はナジュ先生派。一択!」

「グラスフィア先生も格好良いもんなぁ~。悩んじゃうね」

わちゃわちゃ喋りながら、彼女達は教室に戻る。

階段の裏で、わなわなと震えている学院長の存在など知らず。
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