神殺しのクロノスタシス2
稽古場に到着。

そこでは、新米教師のナジュが、実技授業を行っていた。

今日は、炎魔法の実技のようだ。

「はい、それじゃ皆さん。あの魔導人形に向かって、さっき教えた魔法、撃ってみてください」

実技なだけあって、生徒達は、杖を握り締めて真剣な顔。

だが、ナジュ本人は。

「あ、間違って僕を撃っても怒らないので、頑張ってください」

お前、自分が不死身だからって。

生徒達は、ナジュのブラックなジョークに思わず噴き出し。

緊張が、少し解けたようだった。

上手いこと言うもんだな、あいつ。

「成程、ジョークを入れるとウケるのか…」

シルナが何かを学んでる。

お前、存在そのものがジョークみたいなもんだから、ジョークなんて言うまでもないと思うんだけど。

すると、緊張の解けたらしい生徒達が、次々と炎魔法を魔導人形めがけて撃ち込んでいった。

高学年の実技授業なだけに、皆なかなかの腕前。

及第点をあげて良いだろう。

しかし、その中に一人。

緊張からか、元々炎魔法が苦手なのか、他の生徒より若干劣っている女子生徒がいた。

あぁ、あの子知ってる。

俺はシルナと違って、全生徒の顔と名前を覚えている訳ではないが。

高学年にもなると、段々顔と名前が一致する。

あの子は確か、水魔法や氷魔法が得意だったはず。

故に、真逆の炎魔法は、ちょっと苦手なのだろう。

本人も必死なのだが、思ったより威力が出ていなかった。

やや火力不足気味。

筋は悪くないんだが…。

「…」

ナジュも、その生徒に気づいた。

さて、ナジュはどうするのだろう。

シルナなら優しく励まし、イレースなら檄を入れるところだが…。

ナジュはその生徒に歩み寄った。

ナジュが傍に来たことで、怒られるのではないか、と女子生徒がびくっとしているのが見えた。

しかし、ナジュはけろっとして。

「…あれを、魔導人形だと思うからいけないんですよ」

と、言った。
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