神殺しのクロノスタシス2
「良いですよ。僕に分かることなら、何でも話しましょう」

「…では、遠慮なく」

シュニィは、最初の質問を投げ掛けた。

「『カタストロフィ』とは、何なんです?」

一番気になっていたところだな。

『禁忌の黒魔導書』を利用してまで、一体何をしたいのか。

「非常に答えにくい質問ですね」

「かつての仲間を裏切るのは、気が進みませんか」

「あぁ、誤解しないでください」

ナジュは手のひらを出して、シュニィを制した。

「僕は『カタストロフィ』のメンバーではありません。最初から」

「協力していたんじゃないんですか?彼らに」

「協力はしてましたよ。でも、それだけです。僕は彼らの仲間ではなかったし、『カタストロフィ』のメンバーでもありませんでした」

俺達は、ナジュみたいに読心魔法が使える訳ではない。

だから、ナジュが本当のことを言っているのか、それとも保身の為に嘘をついているのかは、判断出来ない。

だが、ナジュの場合は…。

「では、何故『カタストロフィ』に協力を?」

「向こうが誘ってきたんですよ。勧誘されたんです。『カタストロフィ』に入らないかと」

「でも、入らなかった?」

「えぇ。あのときの僕は、ただ自分の目的の為の手段を考えていただけで、他はどうでも良かったんです」

「…」

かつてのナジュの目的が、何だったのか。

ここにいる誰もが知っているだけに、何も言えなかった。

…死に場所を探してたんだもんな。

「彼らに協力していたのは、利害が一致していたからに過ぎません。お互いそこは確認してましたし、彼らの理念なんて、知ったことじゃありませんでした」

「…『カタストロフィ』の理念?」

そもそも、ナジュは死に場所を探していた。

ナジュが生徒達の身を人質に、ベリクリーデを要求したのは。

ベリクリーデ本人ではなく、その中にいる聖なる神。

神ならば、不死身の自分を殺せると思ったから。

ということは…。

「では、『カタストロフィ』の目的は、ベリクリーデさんの中にいる聖なる神だったということですか?」

「えぇ。そう聞いてます」

「…」

…やはり、そうか。

ベリクリーデは、きょとんとしてるけど。

自分のこと言われてるんだぞ。分かってるか?

まぁ、俺も人のことは言えないのかもしれないが…。

「そう、あなたも人のことは言えません。ベリクリーデが無理なら、あなたに手を出すことも計画してましたから」

「…勝手に、心を読むな」

俺よりベリクリーデの方が、手に入れやすいと判断したってことかよ。

「済みません。人の心を読むの、癖になってて」

その癖は良くないと思うぞ。

「僕もそう思います」

「良いから、早く続きを話せ」

「分かりました」

いちいち心読まれてちゃ、話が進まんだろうが。

って思ってるのも、多分バレてるんだろうけど。
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