神殺しのクロノスタシス2
まぁ、そりゃそうなるよな。

ベリクリーデや俺をターゲットにしている時点で、お察しと言うものだ。

「私?私が欲しいの?」

紛うことなく当事者なのに、きょとんとしてるベリクリーデ。

お前のことだって。俺とお前のこと。

もっと正確に言うと、前の、俺だけどな。

「私を手に入れたら、何か良いことあるの?」

「あるんですよ、それが」

「ふーん…。何があるの?」

「それが正しい世界だそうです」

「…?」

首を傾げるベリクリーデ。

いまいちピンと来てないようだ。

何となくだが、『カタストロフィ』の目的が分かってきた。

要するに、あいつらは。

「ベリクリーデの中に封印されてる、聖なる神とやらを復活させたい訳だな?」

「仰る通りです」

やっぱりな。

俺とベリクリーデが狙われる理由なんて、それしかない。

「えっ。あの人復活しちゃったら、私また人格なくなるの?」

ようやく気づいたか、ベリクリーデ。

これは一大事なんだぞ。

俺にとってもな。

聖なる神が復活してしまったら、また俺は…いや。

前の俺の中にいる、禍なる神…邪神を、殺そうとするだろう。

聖戦再び、ってところか?

「その通りです」

心を読むなっての。

「いや、分かりやすく説明してくれたもんで」

「だからって、人の心を勝手に読むな」

「済みません。つい癖が」

悪癖って奴だ、それは。

「聖なる神の復活…。本当に実現したら、羽久さんの命が危ないですね」

「前のときも、めっちゃ憎んでたもんな」

危うく殺されかけた。

まぁ、それは前の俺であって、羽久ではないのだけど。

「そうか…。聖なる神の復活…そして、邪神の殺害…。それが目的なんだね」

「…シルナ…」

「分かってる。確かにそれが、『あるべき世界』…なんだろうね」

…そうかもな。

でも、それは神様の都合。

俺達の都合じゃない。

「賢いあなたなら、もうお分かりでしょうけど…。シルナ・エインリー学院長、あなたは『カタストロフィ』から、完全に敵だと認識されています」

「…だろうね」

禍なる者を守り、聖なる神を封印したのだから。

それは『カタストロフィ』が最も嫌うこと。

あるべき世界とやらの為には、禍なる者の殺害と、聖なる神の復活が絶対条件。

それなのに、率先して邪神を滅ぼさなければならない立場のシルナが、他ならぬ邪神…二十音を…守っている。

『カタストロフィ』には、到底許せないことだろう。
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