神殺しのクロノスタシス2
「聞かせてくれますか。一人ずつ」
相手がそんなに強いなら、こちらもそれなりの対策を考えなくては。
仲間ではなかったとはいえ、協力関係にあった者達を密告するなど。
ナジュに裏切るような真似をさせて、申し訳ないが…。
しかし、当人のナジュは、意外にけろっとしていた。
「良いですよ」
「…良いのか?本当に」
「何度も言ってますが、僕、彼らの仲間じゃないですから」
とは言うけどさ。
「むしろ今となっては、僕、もうちょっと長生きしなきゃならなくなったので。彼らに暗躍されると、僕が困るんです」
良いのか。そんな簡単に。
利用し合ってただけとはいえ。
「じゃあ、まずモブから紹介しますか」
本当に良いのかよ。
しかも、そんな友達紹介するみたいなノリで。
ってか、普通リーダーから紹介しないか?何故モブ?
「ほら、僕楽しみは最後に取っておくタイプなんで」
いちいち心を読むのをやめろっての。
「まぁ、それならモブは後で。先にリーダーについて話しておきますね」
あっそ。
「誰なんだ?リーダーって」
「『カタストロフィ』のリーダーの名は、ヴァルシーナ。ヴァルシーナ・クルス」
…ヴァルシーナ…。
俺は聞き覚えがないが…。
「シルナ、知ってる?」
「いや…。記憶にないね」
シルナが知らないってことは、他の誰も知らないな。
この場で一番長生きしてるの、シルナだし。
「その人、強いの?」
「強いですよ」
ナジュは、きっぱりと言い切った。
…マジかよ。
「めちゃくちゃ強い?」
更に聞くベリクリーデ。
「えぇ。めちゃくちゃ強いです」
「ラスボス級?」
「ラスボス級ですね」
「ラスボス級なんだって。凄いね」
凄いねってお前、さっきから。
そのラスボス級に、一番狙われてるのが自分だって分かってるか?
「私より強いのかな」
「どうでしょう。あなたの中にいる聖なる神の力を以てすれば、勝てるかもしれませんけど」
「私、神様の力なんて自由に使えない」
ただ封印されているだけで、神の力を行使出来る訳じゃないからな。俺達は。
自力で邪神を体内に封じ込めた、二十音なら話が違うだろうが。
少なくとも、羽久・グラスフィアには無理だ。
「で、そのヴァルシーナより下にいるモブ五人は?」
「ヴァルシーナに負けず劣らずの、精鋭達ですよ」
「成程ねぇ…」
ただの、聖なる神同好会かと思えば。
蓋を開けてみれば、厄介極まりないギャング共じゃないか。
まぁ、不死身のナジュを味方につけようとしていた時点で、厄介なのは分かってたが…。
まさか、それほどとは。