神殺しのクロノスタシス2
「私が、ちゃんとしていれば良かった」

「…」

「私が、ちゃんと正しい道を選べば良かった。そうすれば、『カタストロフィ』なんて組織は生まれなかった…」

…でも、シルナは違う道を選んだ。

二十音を、愛してしまったから。

その弊害が、今頃になって自分に降りかかってきた。

自分に、じゃない。

自分達に、だ。

一人で背負えるものならまだしも、一人ではとても背負えない。

故に、教え子達に…聖魔騎士団の魔導師達に…頼らざるを得ない。

自分の誤った選択のせいで。

シルナは自責の念で一杯なのだ。

「…誰も、誰一人、お前のせいだなんて思ってない」

「…」

「自分のせいだって思ってるのは、シルナ一人だけだ」

あるべき世界?

正しい世界?

それが何だって言うんだ。

正しくなければ、世界に価値なんてないってか。

「…決めたんだろ。自分の道」

「…そうだね。私が選んだ」

「俺達も選んだ。シルナが選んだのと、同じ道を」

例えそれが、間違った選択なのだとしても。

あるべき世界、じゃなくて良い。

破滅への道でも良い。

辿り着く先が、地獄の底でも構わない。

だから。

「…許してやれよ、過去の自分を」

「羽久…」

「自分を責めるな。一人で抱え込むな。折角…仲間がいるんだから」

「…」

「…それだけ言いたかった。じゃあ、俺ももう帰る。…お休み」

「…うん、お休み」

言いたいことは言った。

あとは、シルナが自分でけじめをつけるだけだ。
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