神殺しのクロノスタシス2
「じゃあ次!そうだな~…」

まだ続けるのか。

お題考えるのに必死だな。

「とあるクラスでいじめが発覚しました!あなたならどうする!?」

いじめ…か。

どの学校にでもあると言うし、信じたくはないが、もしかしたらイーニシュフェルトでも多少なりとも、あるのかもしれない。

ないに越したことはないのだが。

俺だったら、そのいじめた奴に拳骨入れて、1ヶ月くらい停学にする。

「いじめですか。魔導学院の生徒として、許されざる行為ですね」

イレースもしかめっ面。

魔導学院じゃなくても、許されざる行為だぞ。

ましてやルーデュニア聖王国で、一番の魔導学院と言われている、このイーニシュフェルトで。

そんないじめなんて低俗なことをするなど、最早聖魔騎士団の恥である。

大袈裟じゃなく。本当に。

「難しい問題ですね。いじめの程度にもよりますし」

と、ナジュ。

「たまにからかうくらいなら、注意して済ませて良いかもしれませんけど…」

まぁそれくらいなら、可愛いもの…いや、全然可愛くはないが、キツく叱る程度で済ませて良いかもしれない。

注意しても続けるなら、しかるべき対処が必要だが。

「雑巾洗ったバケツに顔突っ込ませて、シューズに泥を詰め込まれ、ロッカーに閉じ込められて上から下水をぶちまけられて、更に金属バット装備で校舎裏で滅多打ちにするレベルだったら、さすがに許す訳にはいきませんよね」

「当たり前だ」

何だ、その見てきたかのような酷い例は。

それはもういじめ通り越してる。

事件だ、事件。

見ろ。自分の教え子達が、まさかそんなことをしたらどうしようかと、出題者のシルナが震えてる。

大丈夫だ。そこまでのいじめは、イーニシュフェルトでは起きない。

起こさせない。

「イーニシュフェルト魔導学院にまで来て、そんな馬鹿なことをする者は、学院に必要ありません。即刻退学にすべきです」

との、イレースの意見。

相変わらず容赦がない。

更正の機会は与えない。

イレースに、「二度としませんから」は通用しない。

一度でもしたという事実がある限り、イーニシュフェルトの生徒として、そして未来の聖魔騎士団の魔導師に相応しくない。

そう判断したのだろう。

実際、俺もそう思う。

お前な、イーニシュフェルト魔導学院の倍率いくらだと思ってんの?

そこを勝ち抜いて入学したのに、入った途端本性表すんじゃ、もう学院に必要ないよ。

さっさと出ていってくれ。

今回ばかりは、俺もイレースと同意見である。

冷たいと思うか?

勝手に思ってくれ。

「ナジュ君ならどうする?」

「いじめの内容によります」

「じゃあ…例えば、さっきナジュ君が言った、上履きに泥を入れられてたら…」

「そのいじめた主犯格の上履きに、同じく泥突っ込みます」

…。

「…雑巾洗ったバケツに、顔を押し込まれたら…?」

「同じく雑巾洗ったバケツを用意して、主犯格の首根っこ掴んで押し込みます」

…。

「…金属バットで殴ってたら?」

「僕も金属バット持って参戦します」

これぞ、徹底的なハンムラビ法典。

目には目を、歯には歯をという奴である。

ある意味、これが一番正しいのかもしれない。「結構過激だね、ナジュ君…」

「そうですか?だって彼ら、楽しいからそんなことやってるんでしょ?楽しいなら、僕もやってみたいじゃないですか」

素直過ぎるな。

「で、楽しくなかったら、『僕全然楽しくなかったんですけど、あなた達何が楽しくてこんなことやってるんですか?』って聞きます」

「…つえぇ…」

強い。これは強い。

精神的に追い詰めていく感じ。

ナジュらしいと言えばナジュらしい。

そんなん言われたら、もう二度といじめは出来んな。

そもそもそういう生徒は、うちには来ないでくれ。

迷惑極まりない。

生徒達、間違っても、いじめの現場をナジュに見られるなよ。

偉い目に遭うぞ。
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