神殺しのクロノスタシス2
「それじゃ次のお題」

まだやるのか。

もう良いだろ。

「ある生徒が、夏休みの宿題をやってきませんでした!あなたならどうする!?」

…そんな生徒いるか?

イーニシュフェルト魔導学院って、何度も言うけど、ルーデュニア1の魔導学院だぞ。

そんな学校に来て、夏休みの宿題をやらずに来るって。

余程の事情がない限り、そんな生徒はいないぞ。

あ、待てよ。ルイーシュが在学していた頃、あいつ、やってなかったな。夏休みの宿題。

まぁ、あいつは稀なケースだから。

大抵の生徒は、きちんと課題を終わらせてくる。

よって。

「イーニシュフェルト魔導学院に来てまで、夏休みの課題すら計画的に出来ない生徒は、学院に必要ありません」

イレース、一刀両断。

容赦ねぇなぁ…相変わらず…。

「そ、そんな…。宿題やってないだけで退学なんて…」

イレースのあまりの容赦のなさに、シルナがぷるぷるしてる。

まぁシルナだったら、「宿題やってません」と言われても、「じゃあ今から一緒にやろうか!」って答えるだろうから。

俺だったらどうするか、って?

とりあえず、何で宿題出来なかったのか聞く。

病気だったんですとか、身内に不幸があってとか、そういうしかるべき理由があるのなら、多目に見る。

で、新たに期限を設けて、その日までにやってこいよ、って言う。

しかし、しかるべき理由もないのに、宿題をやらなかった生徒は…。

…放課後に居残ってやらせる。

まぁ、そんな生徒は非常に稀なので。ルイーシュくらいなので。

「ナジュ君は?」

「そうですね…。まず、宿題をやってこれなかった理由を聞きます」

おっ、ナジュにしてはまともな意見。

ナジュの前には、嘘や建前は通用しないからな。

言い訳しても無駄だぞ。

「で、他の科目の宿題はやったのか聞きます」

科目別に宿題出てるからな。

「もし、他の科目はやったけど、僕の担当する科目だけやってないのなら、『この半端者が!』って怒ります」

半端者ってお前。

「全部やってないですって言われたら、むしろ褒めます」

は?

「だって、出された宿題全部スルーですよ?めちゃくちゃ度胸あるじゃないですか。半端なのが一番良くない。どうせやらないなら、宿題なんて一切、絶対やるものか、という強い意思を見せて欲しいですね」

あぁ、いっそ清々しいって奴ね。

一理ある。

でも褒めるな。

「教師としてどうなんですか、それは」

苦言を呈するイレースだが。

ナジュはけろっとして。

「いや、僕自身が夏休みの宿題全スルーする人間だったので。生徒に『宿題やれよ』って言える立場じゃないんですよ」

成程。そういうことか。

凄い説得力を感じる。

「で、8月31日に現実に帰って、もういっそ全部白紙で提出すれば良いや、って毎年白紙で出してました」

お前は本当に、自分の欲望に素直だな。

先生の方も、もういっそ清々しかっただろうな。

まぁ、心配するな。

ルイーシュみたいな特例を除いて、うちにはそんな生徒はいないから。
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