神殺しのクロノスタシス2
しかし、今更ながら。

これ、さっきからやってるこの謎デモンストレーション。

これは、職員会議と呼べるのか?

「じゃあ次のお題!」

いや、止めないけどな。

すると。

「学院長、ちょっと」

ナジュが、小さく挙手した。

「何?ナジュ君」

「僕から質問しても良いですか」

お?

「何々?何でも聞いてくれて良いよ」

自信満々のシルナ。

教師歴長いからな、シルナは。

「この間、僕、ちょっと困ったことがあって。そんなときどうしたら良いのか、聞いておきたいんですよ」

「勿論、何でも聞いてくれて良いよ。私はイーニシュフェルト魔導学院の学院長だからね!どんな質問でも、華麗に答えてあげ、」

「女子生徒からラブレターもらったんですけど、ああいうのってどうしたら良いんですか?」

「*◇◎▲∈⊆◆▲△%*」

学院長、華麗にご乱心。

さっきまでの自信は何処へやら。

「何で奇声発してるんですか?何でも答えてくれるんでしょう?」

「知らないもん!何でも答えるなんて言ってないもん!しーらないそんなの!知らない!」

学院長、涙目。

そして幼児化。

すると、イレースが更に追い討ちをかけた。

「そういえば、私ももらったことがありますね。男子生徒に…」

「@▼↓¬〓∀≪⇒▼▲」

学院長、またしてもご乱心。

荒れてんなぁ。

実は俺も、過去、何人かの女子生徒にラブレターもらったり、愛の告白を受けたことがある。

今それを言ったら、シルナがマジで狂いそうだから、黙っておこう。

「学院長は、どんな風に対処するんですか?」

「…」

学院長、無言。

何でも華麗に答えるって、つい数十秒前に言ったばかりなのにな。

真顔で無言だから、むしろ怖いんだけど。

しかし、ナジュは容赦なく。

「『私と付き合ってください』ってラブレター渡されながら言われちゃいまして。ああいうのって困りますよね。シルナ学院長は、ああいうとき、どうやって答えるんですか?後学の為にも、是非教えてください」

「…」

ナジュ、もうやめてやれ。

「僕はもう心に決めた相手がいるので、って言ったら泣かれてしまって。なんか僕が泣かせたみたいで、いや実際僕が泣かせたんですけど。目の前で泣かれても困りますよね」

どうもしてあげられないもんな。

まさか、ナジュの心に決めた相手というのが、自分の中にいる魔物だとも言えず。

適当に誤魔化すしかない。

「…学院長?僕の話聞いてます?」

「…」

「…お耳が遠くなってきたみたいですね。まぁお歳もそれなりに、」

「学院内!不純異性交遊絶対禁止!」

シルナはそう叫び。

そして。

「今日の職員会議終了!もう帰る!帰るーっ!」

涙目で捨て台詞を残し、小会議室を出ていった。

「…何なんですか?あの人」

ナジュが、逃げ帰っていくシルナの背中を指差した。

…何なんだろうな。俺も聞きたいよ。

記念すべき、初の職員会議が、こんな結末とは。
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