神殺しのクロノスタシス2
「自由行動して良いんですか?」

「あ、いえ…。そうですね、ナジュさんは…」

…微妙な立場だよな。

ナジュは、実質執行猶予中の身で、学院の教師をやっているだけで。

聖魔騎士団の人間ではない。

その点、イレースもそうなのだが…。

「学院に残ってください。単独行動は危険ですから」

「…そうですか」

人の心を読めるナジュ。

でも、今回ばかりは、読まずとも分かっただろう。

例え仲間ではないとしても、かつての協力者を自分の手にかけるのは、気が進まないだろう。

そんなシュニィの配慮が、ナジュに分からないはずがない。

「あの、僕から」

エリュティアが、小さく挙手した。

「何ですか?」

「『カタストロフィ』六人の潜伏先についてなんですが…」

…?

「おおよその検討はつけました。でも、確実にそこにいると確信を持っては言えません」

「エリュティア…?」

「…これは、あくまでも個人的な勘でしかないんですが…」

「勘で構いませんよ。言ってください」

と、促すシュニィ。

探索魔法のプロ、他ならぬエリュティアの勘なのだ。

どんな内容であったにせよ、聞いておくべきだ。

「アジトの居場所を見つけたときからそうなんです。何処か、何かに誘導されているような…。調べるのは難しいけど、必ず何処かにヒントがあって…」

「…」

「何かに、操作されているような気がするんです。六人がバラバラに散ったように、僕達も戦力を分散させられるように」

「…成程」

エリュティアに捜索されることを踏まえて。

そして、見つけられることも想定の内で。

こちらが探しているんじゃない。全ては敵さんの手のひらの上で踊らされている…と。

「…有り得ない話じゃないですね。あの狡猾な女狐なら」

ヴァルシーナとやらリーダーのことを知っているナジュが、頷いた。

ディフェンス、オフェンスと二手に分かれてはいるが…。

もしかすれば、そんなことは俺達の都合であって。

敵さんの思惑は、全く別にあるのかもしれない。

なんとも不穏な雰囲気で、その日の会議は終わり。

そして。
< 368 / 742 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop