神殺しのクロノスタシス2
向こうから来てくれれば良いのにって言ってたら。

本当に来た。

え?こいつ本当に『カタストロフィ』のメンバー?

ダンジョンの中ボスじゃなくて?

「えーっと…。『カタストロフィ』の方ですか?」

一応尋ねてみる。

ただの、通りすがりの中二病のおっさんである可能性があるからな。

一応確認しておこう。

「いかにも。『カタストロフィ』の一翼、我が名はレイモンド」

…そうっすか。

「なんか…えっと。済みません…」

謝ってしまった。敵なのに。

俺達、この人の格好良い登場シーン、ぶっ潰しちゃった。

笑い転げなかったから許して。

しかし、馬鹿ルイーシュが。

「済みませんまだお菓子買えてなくて。後でまた来てもらって良いですか?」

「ミニチュア買いに来たんじゃねぇだろ!」

失礼だぞ、敵ながら。

それでなくても俺達、この人の登場シーン崩壊させちゃったのに。

どうすんの。この人にも立つ瀬ってもんがな?

「…そのふざけた言動。お前達、キュレム・エフェメラルとルイーシュ・レイヴン・アルテミシアだな」

ちょっと待てよ。

ふざけてるのはルイーシュだけで、俺は至って真面目なつもりなんだが?

その言い方だと、俺も一緒にふざけてるみたいじゃないか。

「俺はふざけてねぇ。ふざけてるのはこいつだ」

「あ、キュレムさん嘘ついてるでしょ。さっき見ましたよ。この人出てきたとき、笑いそうになったのをめちゃくちゃ頑張って抑えてたでしょ」

「余計なところを見るな!」

普段不真面目な癖に、そういうどうでも良いことだけは見てやがる。

「…救いようがない」

レイモンドとかいう、若干可哀想になってきた『カタストロフィ』のメンバーが言った。

「あ…?」

「こんなふざけた連中が、国の中枢にいるなど」

だから、俺はふざけてねぇっての。

一緒にすんな、一緒に。

「聖魔騎士団とやらも、たかが知れる」

「…」

…ルイーシュは置いとくとして。

聖魔騎士団まで愚弄されるようなことを、した覚えはないんだが?

「『あるべき世界』の為に、お前達には消えてもらう」

「そんな怒らないでくださいよ。お菓子買ってきてあげますから」

だから、この人お菓子の玩具が欲しくて来てるんじゃないって。

言おうとした瞬間、俺とルイーシュの真ん中に、巨大な炎の塊が飛んできた。

あぶなっ。

「馬鹿ルイーシュ!敵を煽るな!」

「おかしいなぁ。俺は煽った覚えないんですけど…」

アホ言え。

このアホへの説教は、とりあえず後だ。

まずは、目の前の戦いに勝たなくては。
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