神殺しのクロノスタシス2
と、ルイーシュは簡単に言うが。

やはり、いつもの戦闘スタイルを崩されるのは、やりにくかった。

こちらの主砲がシューターである俺だと知っているせいで、わざと後ろのルイーシュを狙おうと食いついてくる。

基本的に俺達はいつも、中・長距離戦が守備範囲なのだ。

だから、距離を詰められると困る。

それを承知の上で、レイモンドはわざと、近距離で肉薄してきた。

「ちっ…」

こんなに近づかれたら、こっちまで魔弾に誘爆されてしまう。

ルイーシュの空間魔法で、俺の魔弾をワープさせては、レイモンドの後ろから攻撃するが。

それすらお見通しのようで、レイモンドは意に返さない。

やりにくいったらありゃしない。

「…糞っ」

悪態の一つも出るというものだ。

それに対して、レイモンドは。

「お前達の戦闘スタイルは、所詮初見殺しに過ぎない。やり方が分かっていれば、恐れるに値しない」

…何だと?

「少し小細工しただけの紛い物だ。お前達など、何の脅威にもならない」

何だと?

「お前達ごときが魔導部隊の大隊長など、笑わせてくれる。所詮は…」

「所詮、所詮、所詮…」

…ルイーシュ、敵を煽るなと言ったな。

あれ、撤回だ。

「…お前、自分の言ってること分かってんのか」

「…何?」

「テストで、こっそりカンニングペーパー潜ませて、『対策してたから余裕だしw』って言ってるのと、同じなんだよ」

あらかじめ対策してた?

所詮初見殺し?

言わせておけば、言いたいこと何でも言ってくれやがって、こいつ。

こっちは初見で、お前と戦ってんだぞ。

「…高みの見物で、お調子に乗ってんじゃねぇぞコラ!」

「!?」

俺は、持っていた魔導拳銃を、レイモンドにぶん投げた。

自ら、武器を捨てるも同義。

だがな。

うちの学院長が、得意な武器だけで戦うように、生徒を教育すると思ったら。

大きな間違いなんだよ。

そのとき笑顔で言われたことを、お前にも言ってやろうか。

「…嫌いこそ、物の上手なれってなぁ!!」

「!?」

俺は、渾身の拳骨を、レイモンドの脳天にくれてやった。
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