神殺しのクロノスタシス2
更に。

「おらおら!何だコラさっきまでの余裕は行方不明かあぁん!?」

「っ…」

俺は、鮮やかな体術で拳と蹴りを繰り出した。

レイモンドは、必死にそれらを避けていたが。

その様子は、明らかに慌てていた。

それもそうだろう。

敵は、俺が拳銃で戦うことしか想定していなかった。

それが仇になった。

拳銃で戦うと思っていた相手が、いきなり徒手空拳で殴る蹴るし始めたのだから、そりゃ狼狽えもするだろう。

しかし残念だったな。

お前相手に、慈悲はない。

「残り10分で、試験範囲外の問題に出会ったときの気分はどうだぁ!?」

「ぐっ…!」

初見でなければ、恐れるに足らんと言ったな。

じゃあ、お望み通りの初見をくれてやるよ!

「ある日突然学院長に呼ばれて、『拳銃だけじゃ接近戦に不利だから、体術も鍛えようか』って笑顔で言われたときの気持ち、お前にも教えてやろうか!?」

昨日まで右手で箸持ってたのに、今日から左手で箸使う練習しようか、って言われてんのと同じだからな。

しかし、俺はやったよ。

右手でも左手でも、箸持てるようになったよ。

拳銃でも体術でも、戦えるようになったよ!

「この対策厨めが、これも対策してたんだろうなぁ!」

「うぐっ…!」

レイモンドのこめかみ辺りを、思いっきり殴り付ける。

「…ぐっ…は…」

レイモンドは無様に地面に倒れ。

はぁはぁ言いながらも、まだ生きている様子。

ゴキブリ並みの生命力してやがるな。

頭蓋骨陥没させてやろうかと思ってたんだが?

さすがに、そこまでヤワではないか。

「立てよコラ。俺達を馬鹿にしてくれた礼は、まだ済んでないんだよ」

「き、貴様…!」

レイモンドは、ふらふらしながらも、まだ戦意を失っていなかった。

良いねぇ。そう来なくては。

「このような小細工に…負ける私ではない!」

そう叫ぶなりレイモンドは、拳には拳とばかりに、炎を拳にまとわせ、殴りかかってきた。

しかし。

「あ、一応僕もいるんで、忘れないでくださーい」

「!?」

ルイーシュは、さっき剣で殴られたお礼とばかりに。

レイモンドが繰り出した拳を、空間魔法で異空間に消し。

かと思ったら、その拳をワープさせ、何を隠そう、拳を繰り出したご本人、レイモンドの後頭部に一撃を食らわせた。

自分が放った攻撃が、ルイーシュがワープさせ、自分の後頭部に炸裂したのである。

そりゃあ痛かろう。

しかも、精神的にも大ダメージ。

何せ、相手にぶつける為の拳が、他ならぬ自分の脳天に降りかかってきたのだから。

同情するよ、レイモンド君。
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