神殺しのクロノスタシス2
「…おかあしゃま、いたいいたいなの?」

「え?」

私は、驚いて膝の上に乗っている娘に目をやった。

「おかあしゃま、いたいいたいの顔してる」

「…そうですか?」

いけない、いけない。

これは大人が解決すべき問題であって、子供…アイナ…には関係ない。

私はアイナの頭を撫で、優しく手櫛で髪をといてやった。

「大丈夫ですよ。お母様は、何処も痛くありませんから」

笑顔でそう答えると、アイナは安心したのか、パッと顔を明るくさせた。

アイナがいてくれて、良かった。

不甲斐ない自分の、気持ちが紛れるから。

こんな大事なときに、自宅でのんびりと過ごしていることしか出来ない自分が、情けなくて仕方ない。

皆が戦っているときに…。私一人だけ、何もせず安全な場所で、娘と戯れているだけなんて…。

勿論、お腹の子のことは愛している。

それとこれとは、話が別だ。

この子を身ごもらなければ、私も戦えたのに、とは思わない。

こんな状況だからこそ、生まれてくるであろう子のことが、いとおしくて堪らない。

どうか、この子が生まれる頃には、血生臭いことは全て終わっていますように…。

私はそんな願いを込めて、可愛いアイナの頭を撫でてやった。

アイナには、何の心配もさせたくない。

これは、私達大人が背負う問題なのだから…。






…そのときだった。

「薄汚いアルデン人が、生意気にも人並みの生活をしているようだな」

「!!」

突然背後から聞こえた声に、私は瞬時に振り向いた。





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