神殺しのクロノスタシス2
「もう二人仕留めたって?」

「うん、さっきシュニィちゃんから連絡が来たよ」

…ふーん…。

六人の精鋭と聞いていたが、意外に大したことないって奴か?

いや、単純に数の暴力だろう。

向こうは一人、こちらは二人組だからな。

こちらの方が有利に決まっている。

「で?生け捕りにしたんだろ?」

「いや、それが…」



シルナの代わりに、答えたのはナジュだった。

「殺されたんでしょう。二人共」

「…!本当なのか?シルナ」

「…うん」

二人がかりでも、生け捕りに出来ないなんて…。

「違いますよ、羽久さん」

俺の心を読んだらしいナジュが、問いかけるまでもなく俺の質問に答えた。

「生け捕りにする前に、ヴァルシーナが殺したんでしょう」

「ヴァルシーナが…!?」

ヴァルシーナって言ったら、『カタストロフィ』のリーダーだろう。

リーダーが、自分の部下を殺したと?

「あの女は、自分の部下を殺すことを躊躇いません。部下が敗北した時点で、用済みとみなしてとどめを刺してるはずです」

「…そんな…」

連絡を受けたシルナも、沈鬱とした表情で黙っていた。

沈黙しているということは、ナジュの言う通りなのだろう。

ヴァルシーナは、部下が敗北した時点で、捕虜にされる前に、自分の手にかけた…。

尋問されて、情報を喋らされる前に。

生きて虜囚の辱しめを受けず、って奴か。

志を同じくした、仲間じゃなかったのかよ。

よくもまぁ、容赦なく…。

「ヴァルシーナは、最初から一人で戦ってるようなものですよ」

と、ナジュが言った。

「あの人にとって、志を同じくする部下も、手駒の一つ。『あるべき世界』の為なら、どんな犠牲も厭いません」

「…馬鹿な奴」

どんな犠牲が出ても関係ないって?

馬鹿じゃないのか。

どれほどの犠牲を払って『あるべき世界』を求めても、その世界に誰一人残っていなかったら、何の意味もないじゃないか。

それでも、ヴァルシーナは自分の意思を貫くのか…。
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