神殺しのクロノスタシス2
…この女。

自分が狙われてる自覚はあるのか?

表情がいまいち変わらないから、よく分からないが。

危機感がないことは分かる。

彼女とペアを組むことを決めたのは、他でもない俺だが。

本当にそれで良かったのか、心配になってきた。

あまりにも能天気。そしてマイペース。

まぁ、この女に限っては、案外それくらいで丁度良いのかもしれない。

下手にベリクリーデが好戦的な性格をしていたら、彼女の内に潜む者が、うっかり顔を出しかねんからな。

とりあえず、大人しくしとけと言えば、大人しくしてくれるから。

そういう点、素直で良い。

振り回されるのは御免だしな。

「ねぇジュリス」

「あん?」

退屈そうに足をぷらぷらしていたベリクリーデが、くるりとこちらを向いた。

「退屈だね」

敵に命を狙われてる癖に、退屈とは。

もっと危機感を持てと言っても、彼女には通用しない。

だったら、付き合ってやる他にない。

「あぁ、退屈だな」

実際、俺はベリクリーデのボディーガードをするだけで、他には何もしてないからな。

そりゃ確かに退屈だが、でもそういう問題ではない。

今頃他の仲間達が、残る『カタストロフィ』の四人を追ってるかと思うと。

もう少し、危機感と言うものを持ってもらいたいというものだ。

口に出しては言わないけどな。

「ジュリスも聞いた?もう二人も倒したんだって」

「あぁ、聞いたよ」

『カタストロフィ』六人のうち、二人は始末したらしい。

しかも、ご丁寧にリーダー直々にとどめを刺しに来たそうじゃないか。

俺もかつて、ギャング共の仲間を率いていた時期があるが。

よくもまぁ、自分の部下を、容赦なく殺せるもんだ。

別に裏切った訳でもない、志を共にする仲間なのに。

そりゃ、捕まえれば尋問され、投獄されるだろうけど。

こちら側にナジュがいる限り、いくら尋問に黙秘したとしても、無駄だからな。

心を読まれたら終わり。

だからって、自分の部下をあっさり殺せるか?

そこまでして作り出したい、『あるべき世界』ってのは、一体どんな理想郷なんだろうな。

「ねぇジュリス」

「何だよ?」

「退屈だから、話し相手になって」

「…」

唐突に、いきなりこれだからな。

本当、マイペースで困る。

さすがの俺も、ついていけないくらいだ。
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