神殺しのクロノスタシス2
…とはいえ。

自分より遥かに年下の少女相手に、つっけんどんな態度を取るのも大人気ないか。

「何を話すんだ?」

「ジュリスっていくつなの?」

話って、俺の話かよ。

「さぁな。もう長いこと生きてるから、数えるのもとうにやめちまったよ」

「…ふーん…。私も自分の歳知らないんだ。でも、私の中の神様はきっとお年寄りだろうね」

神に向かって、年寄り呼ばわり。

「じゃあ、ジュリスは何処から来たの?」

「何処からって…」

「ルーデュニア生まれなの?」

「いいや。別の場所だよ」

「故郷に帰りたいなぁって思わない?」

「帰るも何も、もう故郷はねぇよ。長い時間がたったからな。他の国に併合されて、とっくに名前も変わってる」

「へぇー」

へぇって…。

興味があって聞いてるんだか、単なる雑談感覚なのか…。

何かを考えてるのか、何も考えずに聞いてるだけなのか…。

多分後者だと思う。

「お前、質問してばっかだな」

「そう?じゃあ、今度はジュリスが話して」

「俺が?良いぜ、何が聞きたい?」

「ジュリスは長生きなんでしょ?」

「あぁ、それなりには」

少なくとも、まだイーニシュフェルトの里がこの世に存在していた頃から、生きてる。

我ながら、無意味に長生きしたもんだ。

「何か面白い話はない?」

「面白い…?」

「印象に残ってる人とか、ものとか」

あー…。成程。

印象に残ってる人…か。

「一人くらい覚えてない?」

「覚えてるよ。そうだな…。じゃ、俺が今まで会った人間の中で、一番怖かった奴を教えてやろう」

「怖い人間?ジュリス魔導師なのに、人間が怖かったの?」

「あの頃は、魔導師であることを隠してたからな」

今でも、よく思い出す。

俺が彼と対等に接することが出来たのは、いざとなったら自分は杖を出して、他の時空に逃げることが可能だったからだ。

そうでなきゃ、あんな死神みたいなの相手に、商売なんて出来るもんか。

「どんな人だったの?」

「人って言うか、死神みたいだったよ」

「ジュリスは死神に会ったことがあるんだね」

何で、ちょっと嬉しそうなんだ?

あの人とは仕事から何度も会ったが、何も嬉しくなかったぞ。

「その人のこと、もっと聞かせて」

どうやらこのお嬢さんは、例の死神のことが気になるようなので。

俺は彼の話をする為に、記憶を巡らせた。
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