神殺しのクロノスタシス2
俺は慌ててベリクリーデを庇い、背中に押しやった。

心臓を貫かれたサディアスは、そのままばたり、と前のめりに倒れた。

サディアスの後ろにいたのは…。

「お前…。ヴァルシーナとかいう、『カタストロフィ』のリーダーか」

「そうだ」

認めやがった。

自分の部下を、平気で殺したことさえも。

「こいつは、お前の言う『あるべき世界』の為に命を懸けた。それなのにお前は、その部下を自分で殺すのか」

いかに、捕らえられて情報を吐かされるのが面倒だとはいえ。

自分の部下を殺すことに、何の躊躇いもないのか。

「役目を果たせぬ部下など、仲間でも何でもない」

ヴァルシーナは、きっぱりと言ってのけた。

…この、鬼女め。

「で、どうする?サディアスに代わって、お前がベリクリーデを拐っていくのか?」

「それをするのは、私ではない」

…何?

俺が問い掛ける前に、ヴァルシーナは、もう用済みとばかりに消えていなくなった。

…任務失敗した部下の始末の為だけに、来たってのか。

…随分と、立派なリーダーじゃないか。

「…ジュリス、怒ってるの?」

「…あぁ」

「ごめんなさい」

「いや、お前に怒ってるんじゃなくてな…」

それは八つ当たりと言うものだ。

そうじゃなくて。

「自分の仲間を、あんなに簡単に切り捨てる組織に…未来はない」

ヴァルシーナは負ける。

俺はそのとき、そう確信した。
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