神殺しのクロノスタシス2
「へぇー。ここがイーニシュフェルト魔導学院か~。穢れた魔導師の卵達をせっせと育ててるって噂の」

「…来客の予定は、なかったはずですが」

しかも、こんなトゲのある言い方。

間違いなく、学院への来客などではない。

明らかに、私達に敵意を持っている。

…校舎から離れた場所で良かった。

こんなところで、生徒達に教師が戦うところなんて見せられない。

ましてや、生徒が傷を負うようなことになれば…。

私は片手に杖を握り締め、更に聞いた。

「用があるなら、正門から入ってきてくれませんか」

「そんなことより、学院長は?私、シルナ・エインリー先生に会いに来たんだけど」

そんなことより、ですって?

「学院長は不在です。用がないなら帰ってください。生徒の教育に邪魔です」

「酷い言い方するね。あんた、知ってるよ。ラミッドフルスで教師やってた女でしょ」

「…それがどうかしましたか」

「それなのに、あのお偉い学院長先生に洗脳されて、イーニシュフェルトで手駒として飼われてるんだってね。かっわいそ~」

…何故、見ず知らずの女に、私の人生を貶されなければならないのだ。

馬鹿馬鹿しい。

「私は洗脳などされていません。自分の意思でここにいます」

「はいはい。洗脳されてる人は皆そう言うんだって。で?隣のガキは誰?そんな教師、イーニシュフェルトにいたっけ?」

隣のガキ呼ばわりされた天音さんは、無言でじっと女を睨んだ。

「あれ、怒ってる?怖がらないんだ。あんたも一応魔導師?大して強くなさそうだけど」

…なんという無礼な。

しかし天音さんは、挑発には乗らなかった。

代わりに、この不躾な女に問いかけた。

「あなたこそ、誰ですか」

「私?」

その女は、杖を弄ぶようにくるりと回し。

そして、答えた。

「私はクィンシー。お察しの通り、『カタストロフィ』の一翼」

…その自慢げな顔、何だか腹が立ちますね。
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