神殺しのクロノスタシス2
私が敵を煽ったのには、二つの理由がある。

一つ目は、相手が挑発に乗りやすいタイプだと判断したから。

あからさまにこちらを舐めてかかっているから、こういう相手には挑発がよく効く。

そして、敵は冷静さを欠き、本来の力を引き出せなくなる。

この女は、自分は目の前の二人…つまり私と天音さん…を、倒せると確信している。

それなのに、私達二人を相手に、苦戦したらどうする?

確実に倒せると判断した相手に、苦戦すればするほど、焦りは募り、更に冷静さを失っていく。

そうなれば、こっちにとっては良いカモも同然だ。

そして、私が時間稼ぎをした、もう一つの理由。

それは、生徒を逃がす為だ。

現在校舎の中にいる魔導師は、あの優秀なナジュ・アンブローシアだけ。

彼なら、クィンシーが奇襲をかけてきたことに、とっくに気づいているはず。

そして、万一にでも生徒に被害が出ないよう、生徒を安全な場所に退避させているはずだ。

その為の時間稼ぎ。

今頃、生徒達は戦闘区域外に避難しているはずだ。

生徒のことは、ナジュ・アンブローシアに任せる。

あとは、私と天音さんで、この思い上がった生意気な魔導師を倒せば良いだけのこと。

「シルナ・エインリー学院長から賜った、学院長代理の身…。学院には、傷一つつけさせる訳にはいきません」

「糞生意気言いやがって…。本当はシルナの野郎を見たかったけど、良いよ。あんたでも良い。あんたが泥の上でのたうち回って、その生意気な顔がぐちゃぐちゃになるところ、見てやりたくなったよ!」

…上等。

ならばこちらも、応えるのみ。

即席のペアではあるが、問題はない。

「済みません、天音さん。サポートお願いします」

「分かりました」

いざ。

戦闘開始だ。
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