神殺しのクロノスタシス2
クィンシーは、明らかに怒っていた。

「お前らは逃げるだけかよ!えぇ!?」

さっきまで、クィンシーの標的は私だけだった。

しかし今は、天音さんもうざったくなったようで。

天音さんにも、クナイの雨が降っていた。

だが、天音さんは、ただ回復魔法しか使えない魔導師ではない。

れっきとした、聖魔騎士団魔導部隊の大隊長なのだ。

怒りのせいで、精度が落ちたクナイを避けることくらい、彼には容易いことだった。

そして、私にとっても。

思い通りに行かない戦況に、クィンシーは完全に頭に血を上らせていた。

とにかくクナイを当てようと必死。

まるで戦局が見えていない。

これなら、こっそりやらず、堂々とやってもバレなかったかもしれない。

そして、ついに。

「イレースさん!出来ました!」

最後の一つを配置した天音さんが、私に向かって叫んだ。

よし。

私は逃げ続けるのをやめ、クィンシーの前に立った。

「…あなたには、鉄槌を下して改心させるつもりでしたが」

「あぁ!?何言ってんだよババァ!」

「…あなたは最早、更正不可能と見ました。だから…」

「ぐじゃぐじゃ言ってんじゃねぇ!そっちから来ないなら、こっちが…」

「あの世で、己の愚かさを恥じなさい」

私は杖を掲げ、その魔法を起動させた。
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