神殺しのクロノスタシス2
魔法が起動した、瞬間。

クィンシーの周りに、複雑な形の魔法陣が光り出した。

「あぁ!?何だこれ」

クィンシーは、目の前の光景が信じられないようだった。

自分の人生の最後の台詞が、何だこれ、とは。

あまりにも滑稽で、笑えない。

次の瞬間、クィンシーが先程まで、雨あられのように降り注いでいたクナイが、今度はクィンシー自身に向き、殺到した。

「うぎゃぁぁぁ!」

情けない叫び声をあげながら、クィンシーは自分の放った毒を浴びた。

ぐさりぐさりと、クィンシーの身体に毒入りのクナイが突き刺さっていった。

その姿は、まるで全身に針をまとわせたハリネズミにも似ていた。

…自分の産み出した毒で、自分が殺される気分はどうだ。

クィンシーは、10秒と持たなかった。

ハリネズミ状態のまま、身体が倍以上に膨張し、全身がどす黒く変色していた。

「…」

その姿は、あまりにも凄惨で。

しかし、敗北者には相応しい最期なのかもしれなかった。

「…どうします?この…遺体を」

天音さんが、おずおずと尋ねた。

そうだな。

このままここに放置しておく訳にもいかないし。

かといって、迂闊に触って毒をうつされたくもないし。

「…燃やしてしまいましょう。今、ここで」

私は炎魔法を使って、クィンシーの憐れな亡骸を燃やした。

骨など残さない。灰になるまで焼き尽くす。

聖魔騎士団からの情報によると、敗北した『カタストロフィ』のメンバーは、全員リーダーによるヴァルシーナに殺されているという。

ならば、敗北した時点で、この女に生きる権利はなかった。

だから、私が代わりに執行人になる。

それだけの話だ。
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